2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

花灯篭ー24

「ごめんなさい…驚かしてしまって…」 「あの…」 部屋の中に入っても、現状を把握できないわたるに、かなみは驚かせてごめんなさいと呟き、現状を把握できないわたるは、説明が欲しいとばかりにかなみを見つめる。 「ここは…芸者をしていた私の父方の祖母が建…

花灯篭ー23

バスに揺られる事数十分…目的地に着いたみたいで、かなみからバスを降りると声を掛けられ、わたるはかなみと共にバスを降りる。 周りは、田園風景が広がり、何がとっておきの場所かわたるはわからないでいた。 「着きました…ここです…」 「ここですか…?」 …

花灯篭ー22

そして…翌日…約束の日…約束の時間…わたるは、待ち合わせ場所に指定された駅前広場でかなみが来るのを待っていた。 しかし、指定した時刻のなってもかなみは現れなかった…まさか…昨日…西田が来ていたから、来れなくなってしまったのかという考えが過る…でも、…

花灯篭ー21

梅雨が明け、夏到来。 わたるは危険とわかっていながらも、かなみの家の庭先を覗く。 また、花が咲く日を待ちながら、来る日も来る日もかなみの家の庭先を覗く。 その時、携帯が鳴った。仕事の電話だと思い、出てみたら、それは、逢いたくてたまらない声が聴…

花灯篭ー20

「それを伝えるために…俺をここまで連れてきたのか?」 「そうだよ…みんなの前では言えないじゃない…あの人が社長の愛人だってことは…社内中が知ってることだもん…」 危険を知らせるためにここに連れてきたのかと訊ねたわたるに、ゆかりは、そうだと答えた後…

花灯篭ー19

翌日…また長雨の日がやってきた… 「おはよう。わたる」 「あぁ、おはよう」 二度目の逢瀬同様、かなみの家から直接会社に出勤してきたわたるに、ゆかりは、いつも通りに声を掛け、わたるもいつも通り答える。 昨日、ゆかり見ていた…いつものように定時に帰っ…

花灯篭ー18

「わたるさん…どうして…自分から…幸せを手放すのですか…?」 ずっと庭先に花が咲く日を待ち望んでいたと呟いたわたるに、かなみは、待たせる事しかできない自分との恋をどうして選んでしまうのかと呟きかける。 「言ったでしょ…?僕の目には…あなた以外の女…

花灯篭ー17

「僕…毎日ここへきて…庭先に花が咲く日を…待ってました…」 「えぇ…知っています…何度か見かけました…」 毎日ここにきては、庭先に花が咲くのを待っていたと呟いたわたるに、かなみは、何度か庭先に花が咲くのを確かめているわたるを見かけたと呟く。 「よく……

花灯篭ー16

梅雨の切れ間の五月晴れの日…この日もまた、わたるは、かなみの家の庭先に花が咲いてはしないだろうかと確かめに来ていた…。 「(今日も…咲いてないのかな…?)」 あまりに咲かない花に、少しだけ疲れを見せながら、わたるは、かなみの家の庭先を覗く。 しか…

花灯篭ー15

明くる日の夕方…この日も、長雨が続いていた。わたるは帰り道にかなみの家の庭先を覗く。 しかし、今日も花はない。 「(今日も…ないのか…)」 牡丹が咲いて以来、花を咲かせない庭先を見ながら、わたるは、花が咲かない庭先を見つめる。 紫陽花でもいい、咲…

花灯篭ー14

短い夜は明け、かなみは再び籠の鳥へと戻って行った。 熱い名残りを残したまま、会社に出勤したわたるは、籠の鳥へと戻って行ったかなみを思い返す。 「(庭先に花があれば…会える日か…本当に…椿姫っぽくなってきたな…)」 昨夜、かなみが教えてくれた…わた…

花灯篭ー13

「かなみ…さん…」 「はい…」 自分に向けらえた確かな想いを確かめるように、わたるは、かなみを呼び、その声に、かなみは、しっかりとわたるを見据える。 その瞬間、わたるとかなみの視線が重なる…そこに言葉はなかった…見つめ合ったわたるとかなみはどちら…

花灯篭ー12

かなみが残したメッセージに気付き、かなみの家の前にやってきたわたるは、庭先で新しく咲く赤い牡丹の鉢植えに気付く。 昔、観劇した椿姫なら、赤い花は逢える印だと思いながら、赤い牡丹を眺める。 その時、玄関が開く音がし、西田がいるかもしれないと思…

花灯篭ー11

絶望のデザイン画となったデザイン画を見ながら、わたるは、運命の悪戯と片付けるには辛すぎる現実と闘っていた。 わかっていたが、こんな近くにかなみを囲っている人間がいるとは思ってもいなかった。社内ではかなみの噂で持ちきりだった。 社長が白昼堂々…

花灯篭ー10

わたるとかなみが禁じられた関係を結んでから数日後…この日は、社長自ら新規プロジェクトを視察するという事で、社内中が緊張していた。 わたるがいる部署もまた緊張の中にあった。 和装デザインは社運がかかっているといっても過言ではないほどのプロジェク…

花灯篭ー9

わたるが帰った後、かなみは一面に広がる絹の海を片付けながら、かつてない程に熱く乱れたひと時を思い返していた。 茶会の時に、わたるを見た時、全身が雷に打たれたような感覚に陥ったのは事実…そして…今日…そのわたると禁じられた関係を結んでしまった。 …

花灯篭ー8

熱く乱れた後にやってきた沈黙の時間。 かなみは乱れた髪を直し、わたるは天を仰ぐ。 夕闇から宵闇に包まれた絹の海の中で、わたるとかなみは禁じられた想いと重なり合った時を思い返す。 「あの…かなみ…さん…」 「はい…」 宵闇に包まれた天井を仰ぎながら、…

花灯篭ー7

「皆川さん…だめです…」 想いを告げた瞬間、より大胆な行動に出たわたるに、かなみは、か細い声でこれ以上の事に及んではならないと呟く。 これ以上進めば、わたるを苦しめるだけだとかなみはわかっていた。 しかし、唇を奪われただけでときめきが増している…

花灯篭ー6

「皆川さん…?」 突然の事に、かなみは戸惑いを隠せなかった。 確かに、わたるの日本人離れした顔立ちを見た瞬間、かつてないほどに胸がときめいたが、わたるがそんな行動を取るとは考えてもいなかった。 それに、自分にはという思いがあった。恋を恋と気付…

花灯篭ー5

「いいえ…あなたは…僕よりも洗練された目を持っている…」 買い被らないで欲しいと呟いたかなみに、わたるは謙遜しても洗練された目はすぐにわかると声を掛ける。 「ファッションに詳しいデザイナーさんに褒めてもらえて光栄です…」 「いいえ…和装の事に関し…

花灯篭ー4

運命の再会は程なくして訪れた。 ある五月の午後、わたるは、あの茶会の日に、かなみに着物を見せて欲しいと頼み込み、それを了承してくれたかなみの家を訪ねることになった。 桜の花びらが風に舞うのを見越したように、桜を模した色留袖で茶会に参加してい…

花灯篭ー3

その日の茶会は何事もなく終わり、わたるは茶会の作法はわからないままだったが、大きな失態を犯すことなく終えられてほっとしていた。 「あの…」 わたるは、簡単な作法を教えてくれたかなみに礼を言おうとかなみに近寄る。 「はい…あぁ…皆川さん…初めての茶…

花灯篭ー2

「あの…気に障ったらごめんなさい…日本の方ですよね…?」 「はい…日本生まれの日本育ちの両親も生粋の日本人の生粋の日本人です…」 かなみにハーフと間違えられたわたるは、かなみに目鼻立ちや長身なせいでよくハーフに間違えられるが、生まれも育ちも両親も…

花灯篭ー1

恋はするものではなく、落ちるものなのだ。 和服の似合う儚げな女性を一目見た皆川わたるは、そう感じていた。 なんとか名前を知りたい。どんな名前だろうとわたるは思いを巡らせていた。 その女性もまた、わたるを一目見て全身が雷に打たれたような感覚に陥…

花灯篭からもう一度UP

ネタ切れの一環として、初期作品を読んでない方のために、花灯篭と月光花と雪月花をもう一度UPしようとおもうのですが、いかがでしょうか? 雪月花でミスをしていたので、もう一度UPし直したいのですが、いいでしょうか? よければ、今すぐにでもUPし…

下弦の月あとがき

下弦の月いかがでしたか? ちょっと変態チックな作品でしたから受け入れられるか不安でしたが、読んでくださってくれる人がたくさんいてくれてよかったです。 途中まではばばっと書けたのですが、クライマックスからラストが書けなくて苦労しましたが、無事…

下弦の月ー40

「まだ…いじめられ足りないのかい…?」 「えぇ…私…貪欲なのよ…」 「それは知ってる…」 あれだけ甚振られたのに、まだ甚振られたいのかというひろきの問いに、れいかは、自分は貪欲なのだと笑い、それを見たひろきは、れいかが貪欲なのは初めて会った時から知…

下弦の月ー39

「大丈夫かい…?初めてなのに…激しくやりすぎたかな…?」 れいかの視界を奪っていた布を取り払いながら、ひろきは、れいかに、初めてなのに、激しくやりすぎたのではないかと問いかける。 「いいえ…大丈夫です…」 「いま解いてあげるから…」 「解かないで…」…

下弦の月ー38

「あぁっ…んっ…イクっ…いっちゃう…」 蜜穴に入れられた指を激しく蠢かされ、舌で陰核を責められたれいかは、大きく身体を仰け反らせ、小さくて大きな絶頂に飲み込まれていく。 「イッたみたいだね…だけど…今日は…これで終わりじゃないよ…」 小さくて大きな絶…

下弦の月ー37

「あんっ…いやっ…んっ…」 両手を戒められ、視界を奪われた状態で、筆で身体をなぞられるという初めての事に、れいかは、くすぐったいというよりも、感じてしまっている事に驚愕する。 身体の奥が熱くて、ジンジンとする…初めて感じる感覚に、れいかは戸惑い…