「ごめんなさい…驚かしてしまって…」
「あの…」
部屋の中に入っても、現状を把握できないわたるに、かなみは驚かせてごめんなさいと呟き、現状を把握できないわたるは、説明が欲しいとばかりにかなみを見つめる。
「ここは…芸者をしていた私の父方の祖母が建てた旅館です…いまは…いとこが経営しているけれど…ここは…どんな秘密でも守ってくれる所です…」
「どんな秘密も…ですか…?」
この旅館は、自分の父方の祖母が建てた旅館で、どんな秘密も守ってくれる場所だと説明するかなみに、どんな秘密でも守ってくれるのかと問いかける。
「はい…花街の人たちご用達の所です…決して秘密は外に漏らしません…」
わたるの問いかけに、かなみは、ここは、いわゆる花街の人間ご用達の所で、決して秘密は外に漏らさないと呟く。
「じゃあ…ここに来たのは…初めてではないのですね…?」
「そうですね…初めてではないけれど…お客として来たのは初めてです…」
わたるの問いかけに、かなみはここに来たのは、初めてではないが、客として来たのは初めてだと呟く。
「じゃあ…もしかして…」
「えぇ…西田も知らない場所です…」
秘密を完全に守るという事とかなみが客として利用するのは初めてだという言葉に、わたるは、もしかして、社長も知らないとこなのかと訊ねようとした時に、かなみからここには西田を連れてきた事はないという答えが返ってきた。
「どうして…僕を…ここに…連れてきたのですか…?確かに…秘密の関係ですが…こういうところの守る秘密って…」
たとえ、西田が知らないにしても、こういうところが守るべき秘密って限られているのではないかと、わたるはかなみに呟く。
「言ったはずですよね…?ここは…どんな秘密でも守ると…それに…ここに連れてきた理由は…もう一つあるのです…」
わたるの不安に、かなみは、ここはどんな秘密でも守ると言ったはずだと呟いた後、わたるをここに連れてきた理由はもう一つあるのだと呟く。
「窓を開けたらわかります…ここに来たもう一つの理由が…」
「何ですか…?」
窓を開けたら、ここに来た理由がわかると呟くかなみに、わたるは何だろうと思いながら、窓を開ける。すると、窓の外一面に花菖蒲畑が広がっていた。
もしかして…家では花菖蒲を飾れなくて、ここに連れてきたのだろかと、わたるは考えていた。
逢える時は花を飾ると約束していたから、それで、時期の来た花菖蒲を見せるために、自分をここに連れて来てくれたのだろかと考えていた。