2015-02-27から1日間の記事一覧

月光花ー2

「かなみ。どこにいるのだ?かなみ」 わたるとかなみの口付けが深いものとなっていたその時、遠くからかなみの籠の持ち主である西田の声がした。 「西田が戻ってきました。早くここから」 西田のかなみを探す声に気付いたかなみは、わたるから身体を離すと、…

月光花ー1

月明かりの美しい夜に、金木犀の木のそばに佇む人影… 「(かなみさん…)」 この日、皆川わたるは、想い人の綾瀬かなみに逢いたい想いを堪え切れず、かなみの家に籠の主が来ているとわかっていながら、かなみの家に来ていた。 表に立っていたら、籠の主に見つ…

花灯篭ー30

「年越したら…初詣も行きましょうね…」 「えぇ…行きましょう…」 年末年始をかなみと過ごせると知ったわたるは、できる事は全部やっておきたいとばかりに、かなみにお願いする。 かなみもまた、それを嬉しそうに受け入れる。 「来年も…たくさん一緒にいられる…

花灯篭ー29

「じゃあね。わたる」 「あぁ」 葉牡丹を見て帰っていくゆかりを見送ったわたるは、呼び鈴を鳴らしてからかなみが出てくるまでの間、葉っぱにしか見えない葉牡丹を眺める。 「花とは言いづらいですが…お正月くらいまで飾るものなのですよ…」 「かなみさん…」…

花灯篭ー28

季節は秋…かなみの家の裏手から金木犀の香りが漂う季節となった… 「(本当に…大丈夫かな…?)」 金木犀の香りはすれど、庭先には金木犀がないため、本当に入ってもいいのか、わたるは迷っていた。 しかし、金木犀が咲いたらいつでも逢えるとかなみは言ってい…

花灯篭ー27

「かなみさん…」 「はい…」 熱く乱れた後にやってくる静かな時間…かなみは乱れた髪を直すことなく、わたるに寄り添う。 短すぎる夏の夜だが、わたるとかなみは、互いの身体を寄せ合い、指を絡め合う。 「また…籠の鳥…なんですね…かなみさんは…」 「ごめんな…

花灯篭ー26

「かなみ…さん…」 「はい…」 「あの…」 「何でも言ってください…」 かなみを抱き締めたい衝動を堪えるかのように、かなみを見つめるわたるに、かなみは、ここでは何でも自由に言っても構わないと笑いかける。 「かなみさん…聞き飽きているかも…しれませんが……

花灯篭ー25

「かなみさん…」 「花菖蒲を飾れなくて…そういえば…ここがあったと…思い出して…」 一面に広がる花菖蒲畑に、感嘆していたわたるに、かなみは、家に花菖蒲を飾れなくて、そういえば、この旅館も裏手が花菖蒲畑だったことを思い出して、ここにわたるを連れてき…

花灯篭ー24

「ごめんなさい…驚かしてしまって…」 「あの…」 部屋の中に入っても、現状を把握できないわたるに、かなみは驚かせてごめんなさいと呟き、現状を把握できないわたるは、説明が欲しいとばかりにかなみを見つめる。 「ここは…芸者をしていた私の父方の祖母が建…

花灯篭ー23

バスに揺られる事数十分…目的地に着いたみたいで、かなみからバスを降りると声を掛けられ、わたるはかなみと共にバスを降りる。 周りは、田園風景が広がり、何がとっておきの場所かわたるはわからないでいた。 「着きました…ここです…」 「ここですか…?」 …

花灯篭ー22

そして…翌日…約束の日…約束の時間…わたるは、待ち合わせ場所に指定された駅前広場でかなみが来るのを待っていた。 しかし、指定した時刻のなってもかなみは現れなかった…まさか…昨日…西田が来ていたから、来れなくなってしまったのかという考えが過る…でも、…

花灯篭ー21

梅雨が明け、夏到来。 わたるは危険とわかっていながらも、かなみの家の庭先を覗く。 また、花が咲く日を待ちながら、来る日も来る日もかなみの家の庭先を覗く。 その時、携帯が鳴った。仕事の電話だと思い、出てみたら、それは、逢いたくてたまらない声が聴…

花灯篭ー20

「それを伝えるために…俺をここまで連れてきたのか?」 「そうだよ…みんなの前では言えないじゃない…あの人が社長の愛人だってことは…社内中が知ってることだもん…」 危険を知らせるためにここに連れてきたのかと訊ねたわたるに、ゆかりは、そうだと答えた後…

花灯篭ー19

翌日…また長雨の日がやってきた… 「おはよう。わたる」 「あぁ、おはよう」 二度目の逢瀬同様、かなみの家から直接会社に出勤してきたわたるに、ゆかりは、いつも通りに声を掛け、わたるもいつも通り答える。 昨日、ゆかり見ていた…いつものように定時に帰っ…