そして…翌日…約束の日…約束の時間…わたるは、待ち合わせ場所に指定された駅前広場でかなみが来るのを待っていた。
しかし、指定した時刻のなってもかなみは現れなかった…まさか…昨日…西田が来ていたから、来れなくなってしまったのかという考えが過る…でも、来るまで待つと昨日言ったから、かなみが来るという可能性を信じて待ってみようと、わたるは考える。
待つことには慣れているしなと考えながら、かなみが来るのを待ち続ける。
そこへ、黒い帽子を被ったボーイッシュな女性がやってきた。その女性は、わたるの隣に立ち、待ち合わせをしているようだった。
「(かなみさん…早く…来ないかな…)」
恋人か友達かわからないけれど、誰かと待ち合わせをしているそのボーイッシュな女性を見ていたら、かなみがこんな変装をしてでも、自分に逢いに来てくれないかなと考える。
無理な話だが、そんな事をしてまでも自分に逢いに来てくれるかなみが見てみたいなと考える自分が居る事をわたるは感じていた。
その時、隣に立っていたボーイッシュな女性がわたるの方に寄ってきた。何だろうと
思っていたら、その女性がわたるに笑いかけてきた。
「いつになったら…気付いてくれるのですか…?」
「か、かなみさん?」
「声が大きい…」
ボーイッシュな女性がかなみだと気付き、声を上げるわたるに、かなみは、口の前で人差し指を立てる。
さっきからずっと隣に立っていたボーイッシュな女性がかなみの変装だと気付いたわたるは、変装までしてかなみが逢いに来てくれたことを嬉しく思っていた。
「行きましょう…」
「どこへ?」
「いいからついてきてください…」
行こうと促してきたかなみに、どこへ行くのかと訊ねたわたるに、かなみはいいから黙ってついて来てくれればいいと呟く。
行先を教えないかなみに、少し戸惑いながらも、わたるは、かなみについていく。
「でも…驚きました…そんな姿をしてまで…僕に逢いに来てくれて…嬉しいです…」
「嬉しいは…まだとっておいた方がいいですよ…?いまからとっておきの場所に連れて行きますから…」
着物姿しか見た事のないかなみの洋服姿に、驚いたけれど、そこまでして逢いに来てくれて嬉しいと呟いたわたるに、かなみは、いまからとっておきの場所に連れて行くから、嬉しいはまだとっておいた方がいいと呟いてきた。
どこに連れて行かれるかわからないが、かなみと一緒ならそれでいいとわたるは思っていた。