バスに揺られる事数十分…目的地に着いたみたいで、かなみからバスを降りると声を掛けられ、わたるはかなみと共にバスを降りる。
周りは、田園風景が広がり、何がとっておきの場所かわたるはわからないでいた。
「着きました…ここです…」
「ここですか…?」
「はい…」
目的地に着いたと声を掛けてきたかなみに、わたるは本当にここが目的地なのかと訊ねると、かなみはそうだと答えてきた…。
田園風景にマッチしない門構えの建物の前に立ったわたるは、ここがなぜ目的地なのか未だにわからないでいた。
「行きましょう…」
「はい…」
中に入ろうと促してきたかなみに、わたるは、よくはわからないが、かなみについていく。
「お帰りなさいませ。かなみお嬢様」
「(かなみお嬢様?)」
中に入った途端、出迎えた従業員らしき女性に、かなみがお嬢様扱いされている事に、わたるは驚く。
「お嬢様は余計です。それに今日は普通の客として来たのです…わかりますよね?」
「なるほど…わかりました…こちらへどうぞ…」
かなみの言葉に、従業員らしき女性は、わたるを見て、なるほどと唸った後、わたるとかなみを案内し始めた。
「あの…かなみさん…ここって…」
「部屋の案内された後に、詳しく説明します…」
従業員の感じからいって、ここがただの旅館じゃないと感じたわたるは、かなみにここがどういうところか教えて欲しいと訊ねると、かなみからは部屋に案内されてから詳しく説明するという返事が返ってきた。
かなみをお嬢様扱いしてるし、それに、かなみの今日は普通の客として来たという言葉に、何かを感じ取っていた。かなみの隠された素顔がわたるは知りたくてたまらなくなっていた
「どうぞ。この部屋をお使いください」
「ありがとう…くれぐれもわかっていますよね?」
「はい…それが…ここの最大のおもてなしですから…」
「(最大のおもてなし…かぁ…)」
部屋に案内されたわたるは、かなみと従業員のやり取りの中で聞こえてきた最大のおもてなしとは何か気になっていた。
とにかく、かなみに説明してもらわないと現状を把握できないという気持ちだった。