花灯篭ー2

「あの…気に障ったらごめんなさい…日本の方ですよね…?」


「はい…日本生まれの日本育ちの両親も生粋の日本人の生粋の日本人です…」


 かなみにハーフと間違えられたわたるは、かなみに目鼻立ちや長身なせいでよくハーフに間違えられるが、生まれも育ちも両親も日本人の生粋の日本人であると笑いかける。


「ごめんなさい…」


「いいえ…よく間違えられるので…慣れてます…こういうやり取り…」


 わたるをハーフと間違えてしまった気まずさにどういう顔をしていいかわからない表情を浮かべるかなみに、わたるは自分が日本人離れした顔立ちをしているせいでよくハーフに間違えられるから気にしなくてもいいと笑う。


「あの…さっき…仕事柄たくさん着物を持っていると言ってましたが…何のお仕事をされているのですか…?」


 かなみが感じている気まずさを解消するように、わたるはかなみに、先程、仕事柄着物をたくさん持っていると言っていたが、どんな仕事をしているのかと問いかける。


「日本舞踊を…教えてます…道楽に近いような仕事ですが…」


「日本舞踊…どうりで着物が似合うと思いました…」


 わたるに仕事を訊かれたかなみは、道楽に近いような形で日本舞踊を教えていると答え、かなみの職業を聞いたわたるは、どうりで着物がよく似合っているはずだと笑う。


 わたるは職業柄ファッションセンスにはうるさい。しかし、かなみの着物のセンスは、わたるにとって申し分ないセンスで、大和撫子とはこういう人をいうのだろうなとわたるは思っていた。


「皆川さんは…デザイナーって…書いてありますが…洋服のデザイナーですよね…?」


「はい…しがないアパレルメーカーの…しがないデザイナーです…」


 先程渡した名刺を見ながら、洋服のデザイナーなのかと訊ねてきたかなみに、わたるは、しがないアパレルメーカーに勤めるしがないデザイナーだと答える。


「その…洋服のデザイナーさんが…なぜ…着物を着る人が多そうな茶会に…いらしたのですか…?」


「会社が今度和装デザインに進出することになって、そのデザインを僕が担当することになって、参考がてら参加しろと上司に言われて…」


かなみに、洋服のデザイナーがなぜ和服を身につける人間が多い茶会に来たのかと訊ねられたわたるは、勤めているアパレルメーカーが今度和装デザインに進出するから、参考がてら参加するよう上司に言われて参加しているのだと答える。


「そうなんですか…でも…茶会といっても…そんなに畏まるような茶会ではありませんわ…要はお茶を楽しんでもらえたらいいのですから…」


 仕事の参考にという上司命令で来ているから、作法など全くわからないと笑うわたるに、かなみは、そんなに固く考えず、気楽にお茶を楽しめばいい場所だからと笑いかける。

そのかなみの微笑みに、わたるは、今まで感じていた極度の緊張がほぐれていくのを感じた。