2015-10-22から1日間の記事一覧

白い闇ー36

「おはよう。根本さん。根本先生」 自転車を軽快に漕ぐ生徒たちは、仲睦まじげに歩く碧と雅彦に挨拶を交わす。 「おはよう」 それらの声に、雅彦はにこやかに笑いながら、答えていく。 碧が無言で歩いている事など、誰も気に留めなかった。 しかし、それに気…

白い闇ー35

「お帰り…碧…」 全てを知っていながら、知らないような声を掛ける雅彦に、碧は、雅彦の横をすり抜け、浴室へと向かう。 「自分の夫を無視するほどの事があったのかい…?」 「何も…ありません…」 碧の夫である事を主張する雅彦に、碧は、何もないと答える。 …

白い闇ー34

源太が知った碧を包む白い闇…絶望という名の白い闇… 「僕は…やっぱり…君の希望でありたい…」 「なら…このまま…立ち去って…あの人に気付かれないうちに…」 碧の希望でありたいという源太に、碧は、それならば、雅彦に見つからないうちに立ち去って欲しいと呟…

白い闇ー33

そして…日曜日…源太は碧が来ないとわかっていながらも、あの滝で、碧を待ち続ける。 「須本君…?」 「碧さん…?」 来ないと思っていた碧が現れた事で、源太は驚きを隠せなかったが、碧に、以前と変わらない笑顔を浮かべる。 「どうして…来たの…?」 「僕は……

白い闇ー32

「ねぇ…母さん…この町で一番古い人って誰…?」 家に帰った源太は、母の明子に、この町で一番古い人間は誰かと訊ねる。 「そうねぇ…三丁目のトメさんっていうおばあさんかしら…?」 源太の問いに、明子は、一瞬考えた後、三丁目に住むトメという老婆が一番古…

白い闇ー31

「転校生の須本君」 絶望に満ちた源太の心を嘲笑うかのように、浜本が陽気に声を掛ける。 「いい加減…転校生は…やめてくれよ…」 源太が絶望の淵に追いやられているとは知らない浜本の陽気な声に、源太は、もう転校生呼ばわりはやめて欲しいと呟く。 「聞いた…

白い闇ー30

「あっ…やっ…はぁっ…」 雅彦の冷たい愛撫に、碧の躰は、慣れ親しんだように反応し、碧は、蹂躙される事を受け入れるかのような声で啼き続ける。 「碧…今日は…やけに…いい声で啼くな…?面白くなってくるじゃないか…」 碧の薔薇色に染まった肌を辿りながら、雅…

白い闇ー29

「碧…お前が希望を抱く度に…俺は…それを絶望へと変えてきた…今度も…そうなるのかな…?」 「やめて…もうこれ以上は…」 碧の抱いた希望を常に打ち砕いてきた雅彦の狂気に、碧は、もうこれ以上、自分の希望を打ち砕く真似はしないで欲しいと嘆願する。 いままで…

白い闇ー28

「また…ずぶ濡れだな…碧…」 源太とまたこの滝で会おうと約束し合い、別れて、家に戻って来た碧に、雅彦は、日曜日になるとずぶ濡れになって帰ってくるなと冷たく問いかける。 「身体を清めているだけです…」 雅彦の問いに、碧は、身体を清めに行っているだけ…

白い闇ー27

「でもね…私と根本先生は…」 「逃げられないの…?根本先生から…」 雅彦の狂気から逃げる事はできないと言おうとした碧の言葉を遮るように、源太は、碧に、なぜ、雅彦の狂気から逃れられないのかと問いかける。 「そうね…どうしてかしら…?」 源太の言葉に、…

白い闇ー26

「碧さん」 碧と滝で会おうと約束した次の日曜日…源太は碧の姿を見つけ、零れんばかりの笑顔を浮かべる。 「須本君…」 まだ汚れを知らない少年そのままの笑顔を浮かべる源太に、碧は、自分の汚れきった身体を清めたいとばかりに滝へと飛び込む。 「そんなに……

白い闇ー25

その夜の雅彦は、いつも以上に冷たく、しかし、どこか情熱を帯びていて、その反比例する雅彦の狂気に、碧は惑わされていくのを感じる。 いつもと同じ光景のようで、どこか違う光景…碧は、雅彦の狂気に飲み込まれていく自分を感じずにはいられなかった。 なぜ…

白い闇-24

「お帰り…碧…」 源太と別れ、絶望に満ちた家に帰ってきた碧に、雅彦は冷たくお帰りと声を掛ける。 その冷たい声に、碧の全身はビクッとなり、その場に崩れ落ちないだけでも、碧は自分の精神力の強さを褒めたくなった。 「どこに行っていた…?」 「私にだって…

白い闇ー23

滝に打たれる事数分…そろそろ限界が来た源太は、碧に滝から出ようと声を掛け、碧もその声に導かれるように滝から出る。 「根本先生に…何をされているの…?」 「世の中…知らずに済めばいい事もあるわ…」 町中が隠す碧と雅彦の秘密に、初めて立ち入ってきた源…

白い闇ー22

「碧さん…何か…悩んでない…?」 「えっ…?どうして…?」 碧が見せる陰がある表情が気になった源太は、思い切って何か悩んでいないかと訊ね、訊ねられた碧は、どうしてそう思うのかと問い返す。 「なんか…気になっただけ…何もないなら…いいんだ…」 碧の問い返…