源太が知った碧を包む白い闇…絶望という名の白い闇…
「僕は…やっぱり…君の希望でありたい…」
「なら…このまま…立ち去って…あの人に気付かれないうちに…」
碧の希望でありたいという源太に、碧は、それならば、雅彦に見つからないうちに立ち去って欲しいと呟く。
この滝での逢い引きを知っている雅彦に知られないうちに立ち去ってくれと呟く。
「僕は…君を抱き締める事さえ許されないのかい…?」
「そうよ…希望は儚いものなの…私は…愛がないとはいえ…人妻だもの…」
自分には碧を抱き締める事さえ許されないのかと呟いた源太に、碧は、そうだと答え、希望は儚いものであり、自分は愛がないとはいえ人妻である事には変わりはないと答える。
「碧さん…そんな生活…ダメだよ…」
遠くを見ながら自分は人妻である以上、源太の想いには応えられないという碧に、源太は、愛のない結婚生活を続けるなんてダメだと呟く。
「ダメよ…私は…十三の時から根本と暮らしているの…その先はわかるわよね…」
源太の言葉に、碧は、首を横に振ると、自分は雅彦と十三歳の時から暮らしているのだ。血の繋がりがない男女が一緒に暮らす意味は、言わなくてもわかるだろうと呟く。
「そんなの…犯罪だよ…」
「一つの犯罪から生まれた私は…もう…根本しか居場所がないの…」
十三歳の娘に性を仕込むなんて古典での話で、実際には犯罪だと呟いた源太に、碧は、一つの犯罪によって生を受けた自分には、もう雅彦以外の居場所はないのだと呟く。
「希望は…儚いからこそ輝くの…いまのあなたのようにね…」
何も返す言葉が見つからないとばかりに自分を見つめる源太に、碧は、希望はいまの源太のように儚いから輝くものなのだと呟く。