白い闇ー33

そして…日曜日…源太は碧が来ないとわかっていながらも、あの滝で、碧を待ち続ける。


「須本君…?」


「碧さん…?」


 来ないと思っていた碧が現れた事で、源太は驚きを隠せなかったが、碧に、以前と変わらない笑顔を浮かべる。


「どうして…来たの…?」


「僕は…ここで…碧さんを待つしか…知らない…」


 どうしてこの滝に来たのかという碧の問いに、源太は、自分はここで碧を待つ以外何も知らないのだと答える。


「嘘…全部知ってしまったのでしょう…?」


「僕は…何も知らない…」


 自分の秘密を全て知ってしまったのだろうと言う碧に、源太は、何も知らないと言い続ける。


「トメさんが…喋ったって…噂で持ちきりよ…この町…」


 嘘を言っても無駄だと碧は笑うと、この町の最大の秘密をトメが新参者の少年に喋ったという噂でこの町は持ちきりだと、碧は呟く。


「だから…どうだって言うんだい…?」


 源太は、碧に、自分が碧の秘密を知ったからといって何が変わるのかと問いかける。


何も変わらない…変わるはずがない…自分は碧の希望になると決めたのだから、何も変わらないと、源太は碧に告げる。


「変わるわ…あなたは…私の希望だもの…あなたを…私の絶望に引きずり込みたくないわ…」


碧は、源太に、源太は自分の希望なのだから、希望である源太を自分の周囲に渦巻く絶望という名の白い闇に引きずり込むわけにはいかないと呟く。