「転校生の須本君」
絶望に満ちた源太の心を嘲笑うかのように、浜本が陽気に声を掛ける。
「いい加減…転校生は…やめてくれよ…」
源太が絶望の淵に追いやられているとは知らない浜本の陽気な声に、源太は、もう転校生呼ばわりはやめて欲しいと呟く。
「聞いたぜ。根本碧に振られたんだって?」
「どこから…仕入れた…?その情報…」
源太が碧に振られたのだなって声を掛けてきた浜本に、源太は、その情報はどこから仕入れた情報なのだと訊ねる。
「この町は狭いのだよ…根本碧と根本先生が仲睦まじくなったって…母ちゃんが言ってた」
源太の問いに、浜本は、この町は狭いから情報が伝わるのは早いのだと笑い、碧と雅彦の仲が一層良くなったと自分の母親が言っていたと源太に伝える。
「なぁ…根本さんと…根本先生って…本当に遠縁なのか…?」
「俺もさぁ…詳しい事は知らねぇけど…中学の時は…根本じゃなかった気がするんだよな…碧ちゃん…」
絶望の淵で、ふと思った碧と雅彦の関係を呟くように訊ねた源太に、浜本は、詳しくは知らないが、碧は、中学の時は根本を名乗っていなかったはずだと答える。
「それ…本当の話…?」
「おぉ…もう…根本に慣れちまったからあれだけど…中学までは根本じゃなかったはずだぞ…」
その話は本当かと訊ねる源太に、浜本は、頷いた後、碧が根本を名乗る事に慣れてしまったけれど、中学までは確かに根本を名乗っていなかったはずだと答える。
碧にはやはり秘密がある…この町全体で隠しているほどの秘密が…源太は、この町が隠している碧の秘密が知りたくてたまらなくなった。