「お帰り…碧…」
源太と別れ、絶望に満ちた家に帰ってきた碧に、雅彦は冷たくお帰りと声を掛ける。
その冷たい声に、碧の全身はビクッとなり、その場に崩れ落ちないだけでも、碧は自分の精神力の強さを褒めたくなった。
「どこに行っていた…?」
「私にだって…秘密にしておきたい事はあるんです…」
どこで何をしていたと問いかける雅彦に、碧は、全身が凍り付きそうな雅彦の視線を感じながら、自分にも秘密にしておきたい事はあるのだと答える。
「俺に…秘密ね…まだ…自分の立場を…わかってないようだな…」
碧の返しに、雅彦は冷たく笑いながら、碧の両手首を掴むと、まだ自分の立場というものがわかっていなようだなと冷たく言い放つ。
「離してください…」
「俺に歯向かうのか…?」
逃げる術などないとわかっていながらも、抵抗を試みる碧を、雅彦は冷たく見つめながら、自分に歯向かうつもりなのかと問いかける。
「服を…着替えさせてください…」
雅彦の冷たい視線と言葉に、碧は、全身が恐怖で打ち震えるのを感じながらも、服を着替えたいのだと答える。
「いいだろう…どうせすぐ脱ぐことになるのに…」
碧のせめてもの抵抗に、雅彦は冷たく碧を見つめながら、碧の両手首から手を離し、雅彦から逃れるように浴室に向かう碧を見送る。
碧は、自分から逃れる術を知らない…いや…知らないはず…例え…あの少年が碧の希望になろうとも…碧は自分から逃れる事はできない…だって…雅彦が四年を掛けて仕込んだ快楽は…碧を逃がしはしないだろうと雅彦は冷たく笑い続ける。