2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

愛しき罪ー42

「須崎さん…入院…」 「すみません…先生…入院はできないんです…部屋の契約更新とかの関係で…家を空けられないんです…」 病院に呼び出されるように診察にやってきた朱里に、雪田は入院を勧め、入院を勧められた朱里は、申し訳なさそうに家を空けられないから入…

愛しき罪ー41

「須崎さんが君の目の前で自殺を図ったって…本当かい…?」 朱里が自殺を図った数日後…弓月は、朱里の主治医である雪田に呼び出されていた。 朱里が運ばれた先の救急病院から知らせを聞いた雪田は、その場に居合わせていたという弓月にどんな状態で運ばれたの…

愛しき罪ー40

深い闇の中へと誘う影が揺れ、微かに混じり合う吐息…患者と看護師という一線を超える愛しき罪を犯し始めた朱里と弓月の影はいつまでも深い闇の中で揺らめき続ける。 ここが地獄なら…なんて…魅惑的なのだろう…だが…本当の地獄はここから始まるのだから… 「(…

愛しき罪ー39

時刻は午前二時…人は丑三つ時と呼ぶ… そんな時間に重なり合う影がある事を人は知っているだろうか…? 「(これが…弓月さんの本当の指の感触で…そして…私は…いま…弓月さんの腕の中にいる…)」 自分の身体を掠める弓月の指の感触と腕の感触と胸と唇の感触を感…

愛しき罪ー38

ここは朱里の部屋…朱里は、初めて男性を部屋の中へと招き入れた…家族さえ招き入れなかった部屋に、弓月を招き入れた…それだけでも朱里の変化でもある。 「何もない部屋だ…でも…それが朱里の生活感のなさを呼び起こしていたのだな…」 生活感のあるものは一切…

ちょっとブレイク

昨日から『愛しき罪』を読んだ方はあれ?っと思っていらっしゃると思います。 理由は37話をすっ飛ばしたためです。 大事な場面だったからこそすっ飛ばしたら困るページだったので、一度UPした話を削除して、37話をUPしたわけです。 よっちゃんってバ…

愛しき罪ー37

神は時として人に愛の地獄へと誘う愛しき罪を犯させる。 「朱里…もう後戻りはしない…だから…朱里の本心を聞かせて欲しい…」 まだ自分の本心を明かそうとしない朱里に、弓月は、後戻りはしないから朱里の本心をもう明かして欲しいと囁きかける。 「弓月さん……

愛しき罪ー36

「連れて行ってくれるかい…?朱里の言う地獄へと…」 「弓月さん…」 朱里が言う地獄へと連れて行けと言う弓月に、朱里は、これ以上踏み込めば、弓月の築いた幸せな家庭も静かな生活も壊されることになるのだという事をわかっているのかと言わんばかりに弓月を…

愛しき罪ー35

「(弓月さん…何をしているの…?そして…なんで私は…それを拒まないの…?)」 弓月に口付けられた事に驚きながらも、朱里は、どうして弓月の身体を引き剥がそうとしない自分に戸惑う…。 弓月もまた朱里に口付けながら、自分の起こした行動に戸惑っていた。 「…

愛しき罪ー34

「弓月さん…私の家…知らないじゃない…」 「教えてくれたら、連れて帰るよ」 弓月は自分の家を知らないじゃないかと呟く朱里に、弓月は教えてくれたらちゃんと連れて帰ると返す。 「道に落として帰って。幸せな家庭にね」 「確かにそうだが…境界性人格障害の…

愛しき罪ー33

「離してよ…私は…一人で帰れるから…」 「だめだ…そんな調子で家には帰り着けないだろう…」 一人で帰れるから離して欲しいと言い続ける朱里に、弓月はそんな調子では安心して手を離せないと答え続ける。 このまま朱里の身体から手を離せば、朱里がまた行きず…

愛しき罪ー32

「須崎さん…ほらっ…立って…帰りますよ…」 完全に一人で立てないほどに酔った朱里に、弓月は帰りますよと声を掛け、朱里の身体を支える。 「ちょっと…勝手に触らないで…私は一人で帰れるの…」 「嘘吐いてもだめですよ…そんなに飲んだら僕でも立てない…」 勝手…

愛しき罪ー31

「順子さ~ん…」 「はいはい…」 完全に酔っぱらいと化した朱里に、呼びかけられた順子は、朱里にはいはいと笑いかける。 「よくあるのですか…?」 「あるわよ…飲めない酒を浴びるほど飲む時が…でもね…」 朱里が酔っぱらいと化す時はよくあるのかと問いかけて…

愛しき罪ー30

「あの…まだいいですか…?」 「あらっ…いらっしゃい」 荒みきった朱里を順子が持て余し始めたその時、弓月が順子の店へと入って来て、それを見た順子は、笑顔で弓月を迎え入れる。 「須崎さん…」 「誰…?気分悪くするような呼び方するのは…」 「朱里ちゃん」…

愛しき罪ー29

「順子さん…嘘吐くの…上手になる方法ない…?」 その夜、行きつけの順子の店でブランデーの水割りを飲みながら、朱里は、順子にもっと嘘を上手に吐く方法はないかと問いかける。 「そうねぇ…そんな方法があったら…あたしが使ってる…」 朱里の問いかけに、順子…

愛しき罪ー28

それから…一週間後…朱里は、診察のために弓月が勤める病院へと向かう。 弓月に会わない事を祈りながら、診察の順番を待っていた。 「須崎さん…」 「弓月さん…」 逢いたくない時は逢ってしまうもので、夜勤明けの弓月と診察待ちの朱里は、顔を突き合わせてし…

愛しき罪ー27

「(弓月さん…)」 ひと仕事終えて待機所に戻ってくる道中に私用の携帯を見た朱里は、登録したばかりの弓月の番号が着信履歴に残っている事に戸惑う。 初めて会う男に肌をさらし、淫らな行為をする事を生業としているはずなのに、弓月からの着信を見た途端、…

愛しき罪ー26

翌日…弓月は夜勤に向かう道中、朱里の携帯を鳴らしてみる。 しかし、朱里からの返答はなく、今夜はまともに仕事できるかなとため息を吐く。 朱里が知らない男性に肌をさらし、淫らな行為に身を投じるのだと思うと、胸がなぜか締め付けられる。 「(やっぱり……

愛しき罪ー25

「朱里ちゃん…今日…弓月さんに会った?」 「ううん…弓月さんがどうしたの…?」 弓月と会ったのかと問いかける浜田に、朱里は、弓月から電話があった事や順子の店で弓月と会った事を隠すように首を横に振り、弓月がどうしたのかと問い返す。 「会ってないなら…

愛しき罪ー24

一方…朱里はというと、順子の予想していた通りに行きずりの恋に身を投じていた。 行きずりの男と別れ、ついでにもらっておいた万札を見つめる。 人はこれを売春と呼ぶが、朱里にしてみれば損得なしでセックスする方がおかしいと思っていた。 結婚も損得ある…

愛しき罪ー23

「止めに行っても無駄よ…あなたに止められたら…余計に傷つくだけだから…」 朱里の行きずりの恋を止めようと立ち上がった弓月に、順子は止めても無駄だし、第一、弓月に止められたら、朱里は一層傷つくと声を掛ける。 「僕は…どうしてあげれば…?」 「朱里ち…

愛しき罪-22

「すみません…ふらりと僕が立ち寄ったばかりに…」 「いいのよ…朱里ちゃんには朱里ちゃんの気分があるんだから…」 自分がふらりと立ち寄ったばかりに、せっかくの常連客である朱里を早めに帰す羽目になってしまった事を詫びる弓月に、順子は、朱里には朱里の…

愛しき罪ー21

「さっ…そんなところに突っ立てないで座ったらどうかしら…?」 ふらりと立ち寄った店に朱里がいた事に驚き、その場に立ち尽くす弓月に、順子は飲む気があるのなら立ち尽くしてないで座ったらどうかと声を掛ける。 「すみません…じゃあ…失礼します…」 順子に…

愛しき罪-20

「順子さん…私ね…怖いの…自分の中で渦巻くドロドロしたものが…」 「それが…情念なのよ…朱里ちゃん…」 自分の中で渦巻くドロドロしたものが怖いと呟いた朱里に、順子はそれが情念なのだと呟き返す。 順子からすれば朱里はまだ若い世代…情念の本当の恐ろしさな…

愛しき罪ー19

その夜、デリヘルの仕事を休んだ朱里は、行きつけのゲイバーに居た。 「そう…断ったの…そのイケメン看護師さんの誘い…」 朱里から弓月との朝のやり取りの一部始終を聞いたゲイバーのママの順子は、相槌を打ちながら、朱里の複雑な心情を密かに察していた。 …

愛しき罪ー18

『あの…要件って…何ですか…?』 かつてないドキドキ感を堪えるように、朱里は、弓月に要件があるなら早く言ってくれと切り出す。 『そうだったね…あのさ…今日…仕事の方…休めないかい…?』 『えっ…?』 朱里から要件は何かと切り出された弓月は、かつてないド…

愛しき罪ー17

その数時間後…時刻は朝の九時…朱里の私用で使っている携帯が鳴った… 『もしもし…』 番号は確かめなかったが、もしかしてという思いで朱里は携帯に出た。 『もしもし…おはよう…弓月です…』 『弓月さん…』 携帯電話の向こうから聞こえてきた声に、朱里はやはり…

愛しき罪ー16

「時間…来たみたいなので…」 「そうか…じゃあ…行こう…」 時間を知らせる電話が鳴り、それを受けた朱里に促された弓月は、朱里に部屋を出ようと声を掛ける。 「今日は驚いた所もあったけど、楽しかったよ」 「またのご贔屓お待ちしてます」 弓月の友人たちも…

愛しき罪ー15

「これ…名刺です…一応こういう世界での礼儀なので渡しておきます…」 弓月の隣に座った朱里は、弓月に社交辞令的なものだがと名刺を渡す。 もちろん、裏には携帯の番号が書いてある。普段は仕事用の番号を書くのだが、朱里は、弓月に渡した名刺だけには私用の…

愛しき罪ー14

「えっと…めぐみさんって…呼ばなきゃいけないのかな…?」 「できれば…」 朱里を源氏名で呼ぶ事に戸惑う弓月に、朱里はできればこの場では源氏名であるめぐみと呼ぶようにと答える。 「お風呂行きます?」 「いや…何もしなくていい…付き合いで来ているだけだ…