2015-10-16から1日間の記事一覧

愛しき罪ー50

「朱里…もう一度言うよ…朱里の命は…僕の物だ…」 朱里の呟きを聞いた弓月は、もう一度言うから、ちゃんと聞いて欲しいと前置きした後、朱里の命は自分の物になったのだから、もう二度と自らの命を絶つような真似はしないで欲しいし、自分がさせないと呟く。 …

愛しき罪ー49

深い闇の中をひた走った車は、静かな湖のほとりで停まる。 深い闇の中に包まれる湖は、静かでありながら、どこかさらに大きな闇へと誘っているようだった。 「いい未来…浮かんだかい…?」 湖のほとりに車を停めた弓月は、朱里にここまで来るまでの道中、いい…

愛しき罪ー48

流れる車窓から見る景色…夢にまで見た弓月の車の助手席に座った朱里は、無言のまま深い闇の中をひた走る車のハンドルを握る弓月と車窓から見える景色を交互に見る。 深い闇は、どこか自分たちに寛容的な気がして、朱里は、これが本当の旅立ちとは思えずにい…

愛しき罪ー47

「もう…朱里しかいらないんだ…僕は…」 無言で自分を見つめる朱里に、弓月はもう朱里以外の何もいらないのだと呟き、朱里の涙で腫れた瞼に口付ける。 「(弓月…さん…)」 自分の泣き腫らした瞼に唇を寄せられた朱里は、もうこれ以上、弓月を拒み続ける事がで…

愛しき罪ー46

「帰って…お願いだから…帰って…」 これ以上弓月を目の前にすると、泣きすがりたい衝動を抑えられなくなると思った朱里は、弓月にお願いだからもう帰って欲しいと呟く。 「帰らないよ…正確には…帰れない…自分に嘘を吐く朱里を放ってなんか…帰れない…」 お願い…

愛しき罪ー45

「朱里は確かにそういう病気だけど…いままでこんなに冷たくはなかった…」 「私にどうしろと言うのです…?」 確かに朱里はそういう傾向の病気だが、ここまで冷たくはしなかったと呟く弓月に、朱里は自分にどうして欲しいというのかと問いかける。 「人は何も…

愛しき罪ー44

それから…一か月後… デリヘルの仕事を終えて部屋に戻って来た朱里は、部屋があるマンションの前に見覚えのある車が止まっているのを目にする。 「(弓月さんの車によく似てるわね…でも…あんな車…日本中…いや…世界中に走っているんだから…弓月さんの車なわけ…

愛しき罪ー43

『もしもし…弓月です…』 「(これ…何回目かしら…?)」 携帯に残る弓月が残した留守番電話を朱里は、何回も聞いて何になるのだろうと思いながら、繰り返しその留守電の声を聞き続けていた。 「(未練…って…やつ…かしら…?)」 たった一夜の夢に浸る自分は、…

愛しき罪ー42

「須崎さん…入院…」 「すみません…先生…入院はできないんです…部屋の契約更新とかの関係で…家を空けられないんです…」 病院に呼び出されるように診察にやってきた朱里に、雪田は入院を勧め、入院を勧められた朱里は、申し訳なさそうに家を空けられないから入…

愛しき罪ー41

「須崎さんが君の目の前で自殺を図ったって…本当かい…?」 朱里が自殺を図った数日後…弓月は、朱里の主治医である雪田に呼び出されていた。 朱里が運ばれた先の救急病院から知らせを聞いた雪田は、その場に居合わせていたという弓月にどんな状態で運ばれたの…

愛しき罪ー40

深い闇の中へと誘う影が揺れ、微かに混じり合う吐息…患者と看護師という一線を超える愛しき罪を犯し始めた朱里と弓月の影はいつまでも深い闇の中で揺らめき続ける。 ここが地獄なら…なんて…魅惑的なのだろう…だが…本当の地獄はここから始まるのだから… 「(…

愛しき罪ー39

時刻は午前二時…人は丑三つ時と呼ぶ… そんな時間に重なり合う影がある事を人は知っているだろうか…? 「(これが…弓月さんの本当の指の感触で…そして…私は…いま…弓月さんの腕の中にいる…)」 自分の身体を掠める弓月の指の感触と腕の感触と胸と唇の感触を感…

愛しき罪ー38

ここは朱里の部屋…朱里は、初めて男性を部屋の中へと招き入れた…家族さえ招き入れなかった部屋に、弓月を招き入れた…それだけでも朱里の変化でもある。 「何もない部屋だ…でも…それが朱里の生活感のなさを呼び起こしていたのだな…」 生活感のあるものは一切…

ちょっとブレイク

昨日から『愛しき罪』を読んだ方はあれ?っと思っていらっしゃると思います。 理由は37話をすっ飛ばしたためです。 大事な場面だったからこそすっ飛ばしたら困るページだったので、一度UPした話を削除して、37話をUPしたわけです。 よっちゃんってバ…