2015-10-15から1日間の記事一覧

愛しき罪ー37

神は時として人に愛の地獄へと誘う愛しき罪を犯させる。 「朱里…もう後戻りはしない…だから…朱里の本心を聞かせて欲しい…」 まだ自分の本心を明かそうとしない朱里に、弓月は、後戻りはしないから朱里の本心をもう明かして欲しいと囁きかける。 「弓月さん……

愛しき罪ー36

「連れて行ってくれるかい…?朱里の言う地獄へと…」 「弓月さん…」 朱里が言う地獄へと連れて行けと言う弓月に、朱里は、これ以上踏み込めば、弓月の築いた幸せな家庭も静かな生活も壊されることになるのだという事をわかっているのかと言わんばかりに弓月を…

愛しき罪ー35

「(弓月さん…何をしているの…?そして…なんで私は…それを拒まないの…?)」 弓月に口付けられた事に驚きながらも、朱里は、どうして弓月の身体を引き剥がそうとしない自分に戸惑う…。 弓月もまた朱里に口付けながら、自分の起こした行動に戸惑っていた。 「…

愛しき罪ー34

「弓月さん…私の家…知らないじゃない…」 「教えてくれたら、連れて帰るよ」 弓月は自分の家を知らないじゃないかと呟く朱里に、弓月は教えてくれたらちゃんと連れて帰ると返す。 「道に落として帰って。幸せな家庭にね」 「確かにそうだが…境界性人格障害の…

愛しき罪ー33

「離してよ…私は…一人で帰れるから…」 「だめだ…そんな調子で家には帰り着けないだろう…」 一人で帰れるから離して欲しいと言い続ける朱里に、弓月はそんな調子では安心して手を離せないと答え続ける。 このまま朱里の身体から手を離せば、朱里がまた行きず…

愛しき罪ー32

「須崎さん…ほらっ…立って…帰りますよ…」 完全に一人で立てないほどに酔った朱里に、弓月は帰りますよと声を掛け、朱里の身体を支える。 「ちょっと…勝手に触らないで…私は一人で帰れるの…」 「嘘吐いてもだめですよ…そんなに飲んだら僕でも立てない…」 勝手…

愛しき罪ー31

「順子さ~ん…」 「はいはい…」 完全に酔っぱらいと化した朱里に、呼びかけられた順子は、朱里にはいはいと笑いかける。 「よくあるのですか…?」 「あるわよ…飲めない酒を浴びるほど飲む時が…でもね…」 朱里が酔っぱらいと化す時はよくあるのかと問いかけて…

愛しき罪ー30

「あの…まだいいですか…?」 「あらっ…いらっしゃい」 荒みきった朱里を順子が持て余し始めたその時、弓月が順子の店へと入って来て、それを見た順子は、笑顔で弓月を迎え入れる。 「須崎さん…」 「誰…?気分悪くするような呼び方するのは…」 「朱里ちゃん」…

愛しき罪ー29

「順子さん…嘘吐くの…上手になる方法ない…?」 その夜、行きつけの順子の店でブランデーの水割りを飲みながら、朱里は、順子にもっと嘘を上手に吐く方法はないかと問いかける。 「そうねぇ…そんな方法があったら…あたしが使ってる…」 朱里の問いかけに、順子…

愛しき罪ー28

それから…一週間後…朱里は、診察のために弓月が勤める病院へと向かう。 弓月に会わない事を祈りながら、診察の順番を待っていた。 「須崎さん…」 「弓月さん…」 逢いたくない時は逢ってしまうもので、夜勤明けの弓月と診察待ちの朱里は、顔を突き合わせてし…

愛しき罪ー27

「(弓月さん…)」 ひと仕事終えて待機所に戻ってくる道中に私用の携帯を見た朱里は、登録したばかりの弓月の番号が着信履歴に残っている事に戸惑う。 初めて会う男に肌をさらし、淫らな行為をする事を生業としているはずなのに、弓月からの着信を見た途端、…

愛しき罪ー26

翌日…弓月は夜勤に向かう道中、朱里の携帯を鳴らしてみる。 しかし、朱里からの返答はなく、今夜はまともに仕事できるかなとため息を吐く。 朱里が知らない男性に肌をさらし、淫らな行為に身を投じるのだと思うと、胸がなぜか締め付けられる。 「(やっぱり……

愛しき罪ー25

「朱里ちゃん…今日…弓月さんに会った?」 「ううん…弓月さんがどうしたの…?」 弓月と会ったのかと問いかける浜田に、朱里は、弓月から電話があった事や順子の店で弓月と会った事を隠すように首を横に振り、弓月がどうしたのかと問い返す。 「会ってないなら…

愛しき罪ー24

一方…朱里はというと、順子の予想していた通りに行きずりの恋に身を投じていた。 行きずりの男と別れ、ついでにもらっておいた万札を見つめる。 人はこれを売春と呼ぶが、朱里にしてみれば損得なしでセックスする方がおかしいと思っていた。 結婚も損得ある…

愛しき罪ー23

「止めに行っても無駄よ…あなたに止められたら…余計に傷つくだけだから…」 朱里の行きずりの恋を止めようと立ち上がった弓月に、順子は止めても無駄だし、第一、弓月に止められたら、朱里は一層傷つくと声を掛ける。 「僕は…どうしてあげれば…?」 「朱里ち…

愛しき罪-22

「すみません…ふらりと僕が立ち寄ったばかりに…」 「いいのよ…朱里ちゃんには朱里ちゃんの気分があるんだから…」 自分がふらりと立ち寄ったばかりに、せっかくの常連客である朱里を早めに帰す羽目になってしまった事を詫びる弓月に、順子は、朱里には朱里の…