2015-10-14から1日間の記事一覧

愛しき罪ー21

「さっ…そんなところに突っ立てないで座ったらどうかしら…?」 ふらりと立ち寄った店に朱里がいた事に驚き、その場に立ち尽くす弓月に、順子は飲む気があるのなら立ち尽くしてないで座ったらどうかと声を掛ける。 「すみません…じゃあ…失礼します…」 順子に…

愛しき罪-20

「順子さん…私ね…怖いの…自分の中で渦巻くドロドロしたものが…」 「それが…情念なのよ…朱里ちゃん…」 自分の中で渦巻くドロドロしたものが怖いと呟いた朱里に、順子はそれが情念なのだと呟き返す。 順子からすれば朱里はまだ若い世代…情念の本当の恐ろしさな…

愛しき罪ー19

その夜、デリヘルの仕事を休んだ朱里は、行きつけのゲイバーに居た。 「そう…断ったの…そのイケメン看護師さんの誘い…」 朱里から弓月との朝のやり取りの一部始終を聞いたゲイバーのママの順子は、相槌を打ちながら、朱里の複雑な心情を密かに察していた。 …

愛しき罪ー18

『あの…要件って…何ですか…?』 かつてないドキドキ感を堪えるように、朱里は、弓月に要件があるなら早く言ってくれと切り出す。 『そうだったね…あのさ…今日…仕事の方…休めないかい…?』 『えっ…?』 朱里から要件は何かと切り出された弓月は、かつてないド…

愛しき罪ー17

その数時間後…時刻は朝の九時…朱里の私用で使っている携帯が鳴った… 『もしもし…』 番号は確かめなかったが、もしかしてという思いで朱里は携帯に出た。 『もしもし…おはよう…弓月です…』 『弓月さん…』 携帯電話の向こうから聞こえてきた声に、朱里はやはり…

愛しき罪ー16

「時間…来たみたいなので…」 「そうか…じゃあ…行こう…」 時間を知らせる電話が鳴り、それを受けた朱里に促された弓月は、朱里に部屋を出ようと声を掛ける。 「今日は驚いた所もあったけど、楽しかったよ」 「またのご贔屓お待ちしてます」 弓月の友人たちも…

愛しき罪ー15

「これ…名刺です…一応こういう世界での礼儀なので渡しておきます…」 弓月の隣に座った朱里は、弓月に社交辞令的なものだがと名刺を渡す。 もちろん、裏には携帯の番号が書いてある。普段は仕事用の番号を書くのだが、朱里は、弓月に渡した名刺だけには私用の…

愛しき罪ー14

「えっと…めぐみさんって…呼ばなきゃいけないのかな…?」 「できれば…」 朱里を源氏名で呼ぶ事に戸惑う弓月に、朱里はできればこの場では源氏名であるめぐみと呼ぶようにと答える。 「お風呂行きます?」 「いや…何もしなくていい…付き合いで来ているだけだ…

愛しき罪ー13

「おい、どの子にする?俺はこのめぐみって子がいいな」 デリヘルを呼びたいと言い出した弓月の友人が朱里たちを値踏みしながら、朱里の手を取る。 「だめだ。この子は俺が連れていく」 朱里の手を取った友人に、弓月は慌てて朱里を自分の元へと引き寄せる。…

愛しき罪ー12

「(困ったな…)」 ラブホテルの駐車場で弓月は途方に暮れていた。 翌日仕事が休みだった弓月は、友人たちと酒を飲みに出かけていた。 久々に飲む友人たちとの酒は楽しかったが、あまりの楽しさに、友人の一人がみんなでデリヘルを呼ぼうと言い出し、弓月以…

愛しき罪ー11

それから一か月後…朱里は主治医に退院の許可をもらい、退院していった。 朱里の生業はデリヘル嬢である。以前の店は入院した時に辞めたが、また新しいデリヘルの店へと所属していた。 朱里はなぜかデリヘルの仕事が水に合っていた。時たま嫌な客に当たる時も…

愛しき罪ー10

「(俺が…須崎さんを…特別視してる…?)」 仮眠室のベッドに身体を横たえ、目を閉じながら、弓月は仮眠を取らなければならないと思いながらも、脳裏に過る浜田のもしかすると朱里を特別視しているのではないかという言葉を反芻していていた。 「(そんな…バ…

愛しき罪ー9

「弓月さん。朱里ちゃん…薬飲みましたよ…」 「そうか…」 朱里が薬を服用した事を報告して来た浜田に、弓月はそうかと小さく呟く。 担当看護師である自分に反抗的なのに、朱里が浜田には柔軟に対応する事に、弓月はなぜか苛立ちを感じていた。 「弓月さん。弓…

愛しき罪ー8

「弓月さんは朱里ちゃんの事が心配なんだよ…」 「わかってるわ…でも…自分をコントロールできないのよ…」 弓月は朱里が心配なのだと声を掛ける浜田に、朱里はわかっているけれど、弓月を目の前にすると、自分をコントロールできなくなるのだと呟く。 「いつか…

愛しき罪ー7

「弓月さん。落ち着いて」 弓月と朱里の言い合いに気付いたもう一人の夜勤の看護師の浜田が朱里の病室へと駆けつけ、弓月に冷静になるように声を掛ける。 「ここは僕に任せて、弓月さんは詰所に戻ってください」 「あぁ…そうするよ…」 この場は自分に任せて…

愛しき罪ー6

「須崎さん。いい加減にしないと怒りますよ」 拒食はおろか服薬拒否まで始めた朱里に、弓月は拒食も服薬拒否もやめなければ怒るぞと声を掛ける。 「怒りたければ怒ればいいじゃない。私は嫌なものは嫌なの」 弓月に対しての情念に気付き始めた朱里は、弓月を…