「朱里ちゃん…今日…弓月さんに会った?」
「ううん…弓月さんがどうしたの…?」
弓月と会ったのかと問いかける浜田に、朱里は、弓月から電話があった事や順子の店で弓月と会った事を隠すように首を横に振り、弓月がどうしたのかと問い返す。
「会ってないならいいんだよ…ただ…僕は感情的になられると嬉しいタイプだからさ…気にしないんだけど…弓月さんは感情的になる人を気にするタイプだからさ…朱里ちゃんの事…気にしてるんじゃないかと思って…」
朱里の問い返しに、浜田は、弓月と会っていないならいいのだし、自分は感情的になられると嬉しくなるタイプだから、さほど気にしないのだが、弓月は感情的になる人を気にするタイプだから、朱里の事を気にしているのではないかと気になっているのだと答える。
「浜田さん…考えすぎ…弓月さんが私を気にするほど暇な人じゃないって…浜田さんがよく知っているじゃない…」
浜田の答えに、朱里は、それは浜田の考えすぎで、弓月がすでに退院した自分を気にするほど暇な人間ではない事は、浜田が一番知っているじゃないかと呟く。
「そうだけど…なんか気になるんだよね…弓月さんと朱里ちゃんの仲が…」
「仲って…ただの患者と看護師だよ…」
弓月が忙しい人間である事はわかるが、どうしても弓月と朱里の仲が気になるのだと呟く浜田に、仲と言われても、ただの患者と看護師の仲なのだと朱里は答える。
「弓月さんも…朱里ちゃんも…不器用だから…傷付け合ってしまうのではないかと心配なんだよ…」
「傷付け合う程仲は良くないよ…所詮…患者と看護師なんだから…」
弓月も朱里も不器用な性格をしているから、傷付け合ってしまっているのではないかと心配なのだと呟いた浜田に、朱里は、傷付け合う程弓月と自分は仲がいいわけではない、所詮、患者と看護師にしか過ぎないのだからと答える。
そう…弓月は入院していた時の担当看護師にしか過ぎない相手…それ以上でもそれ以下でもないと、朱里は自分に言い聞かせる。