2015-03-01から1日間の記事一覧

雪月花ー21

「私も…最初に知っておいてもらいたいのは…わたるさんが大好きでたまらないことです…」 「はい…覚えておきます…」 最初に知っておいてもらいたいのはわたるが大好きでたまらないことだと呟いたかなみに、わたるは、嬉しそうに頷き、ちゃんと覚えておくと呟く…

雪月花ー20

「この家は…亡くなった両親が残してくれた家です…」 わたるの問いに、かなみは、この家は、数年前に相次いで亡くなった両親が残してくれた家だと答える。 「かなみさん…あなたは…一体…」 かなみの答えに、わたるは、こんな大きな家を残してもらえるくらいの…

雪月花ー19

かなみの家へと急いでやってきたわたるは、かなみの家の呼び鈴を鳴らす。しかし、かなみは出てこなかった。 「(もう…引っ越したのかな…?)」 かなみが一人で保つには大きすぎる家の前で、わたるは、西田が社長を解任されたせいで、かなみを囲えなくなって…

雪月花ー18

数日後…出勤してきたわたるは、ざわつく人だかりを目にする。 「(左遷の内示が出たか…)」 自分は社長に歯向かった身だから、左遷は覚悟していたと思いながら、わたるは、ざわつく人だかりに近付く。 「わたる。大変大変」 「わかってるよ」 わたるを見つけ…

雪月花ー17

「んっ…うっ…」 「気がつきましたか…?」 少し唸って目を覚ましたかなみに、わたるは、気がついたかと声を掛け、かなみを抱き寄せる。 「西田は…?」 「帰られました…」 西田はどこに行ったのかと訊ねてきたかなみに、わたるは、西田は帰ったと答える。 「か…

雪月花ー16

「かなみさん…いきますよ…いいですね…?」 「はい…」 かなみの秘丘から顔を上げたわたるは、かなみに、いまから一つになるけれどいいかと訊ね、かなみもそれに頷く。 その返事を聞いたわたるは、かなみの秘丘に自分の分身をあてがうと、かなみの中へと突き進…

雪月花ー15

「だったら、抱いてみろ。どうせ、口だけだろ」 わたるの挑戦ともいえる呟きに、西田はそれが本当なら、いまここでかなみを抱いてみろと告げる。 「いいですよ…あなたが…それを…直視できるなら…」 西田の挑戦とも取れる言葉に、わたるは、西田が自分のように…

雪月花ー14

「旦那…様…やめて…ください…」 「いいじゃないか…見せつけてやろうじゃないか…この男に…」 か細い声でやめて欲しいと呟くかなみに、西田は、わたるに自分たちの関係を見せつけてやろうと呟くと、わたるに見せつけるように、かなみの身体に唇を這わせ続ける。…

雪月花ー13

罠は…思わぬところに仕掛けてある…罠は罠とはわからない形で仕掛けてある… 「(あっ…すみれだ…)」 西田との鉢合わせを免れてから数日後…わたるは、いつものように、かなみの家の庭先に花が咲いていないか確かめにきていた。 そして、この日、庭先にすみれを…

雪月花ー12

「彼女と何の話をしていたのだね?かなみ?」 「着物と日舞の話を…」 ゆかりが帰った後、西田にゆかりと何を話していたのかと訊かれたかなみは、着物と日舞の話をしていたのだと答える。 「本当は、彼女ではないのじゃないか?話をしていたのは」 「どうして…

雪月花ー11

「かなみさん…あなたが…夜を忍んで…逢いに来てくれたから…僕も…冬を忍ぶのです…」 自分は小さな幸せなど運んでいないと呟いたかなみに、わたるは、かなみが夜を忍んで逢いに来てくれたから、自分も吹雪吹きすさぶ冬よりも厳しい冬を忍ぶのだと呟く。 「わた…

雪月花ー10

その日の夕方…空は茜色から紫色へと変わりつつあった… 「(やっぱり…花はないか…)」 ゆかりに忠告されたが、やはり、庭に花が咲いていないか確かめたかったわたるは、かなみの家の前に来ていた。 そして、庭に花が咲いてないか、確かめて、咲いてなかったか…

雪月花ー9

それから…数日後… 「わたる。ちょっと」 定時になり、帰り支度をしていたわたるに、わたるとかなみの関係を知っているゆかりが声を掛ける。 「何だよ」 訳が分からないまま、手を引かれたわたるは、ゆかりに何の用だと訊ねる。 「今日は行かない方がいいよ。…

雪月花ー8

熱く乱れた後に訪れる沈黙の時間…かなみは、乱れた髪を直しながらわたるを見る。 「こうして…かなみさんを…見ていると…やっぱり夢のようです…ここに…かなみさんが…いる事が…」 熱く乱れた余韻もそのままに、わたるは、かなみに、自分の部屋にかなみがいて、…

雪月花ー7

「あっ…んっ…ふっ…んっ…はぁっ…」 静かな部屋にかなみの甘くそれでいて艶やかな声が漏れ聞こえる。 「わたるさん…だめっ…そんな…ところ…」 わたるの細やかさが増す愛撫に、かなみはそんな事はしないでくれと、口を開けば漏れる甘い吐息に邪魔されながら呟く…

雪月花ー6

かなみは走る…闇夜に紛れて走る…逢いたくて…恋しくてたまらない人のもとへ… 「かなみさん」 インターホンが鳴り、まさかと思いながら、ドアを開けたわたるは、ドアの前に立っていたかなみに驚く。 昨日に続いて逢いに来てくれた事がわたるは嬉しかった。 「…

雪月花ー5

「わが社が出した帯は、全部かなみに似合いそうな物ばかりだ」 「そうですか…?」 自分の会社が出した帯は全部かなみに似合いそうな物ばかりだと感嘆する西田に、それもそのはずだと言えないかなみは、そうですかと首をかしげる。 いままで出された帯は、み…

雪月花ー4

翌日…かなみは、西田の来訪を受けていた…かなみの入っている籠の持ち主だから毎日のように来ていても不思議ではないのだが、それだけ、わたるとかなみが逢えなくなる時間が長くなるだけだった。 「かなみ…最近…変わったな…」 「どこがですか…?」 事に及んだ…

雪月花ー3

「かなみさん…」 「わかっています…少し待ってください…」 着物の裾から分け入るように手を忍ばせ、かなみが欲しいと呟いたわたるに、かなみは、わかっているから少しだけ待つよう呟き、わたるから身体を離すと、わたるに背を向け、着物の帯を自ら解く。 「…

雪月花ー2

「青山さんが…私の家に来た時に…あなたの家の住所を教えてくださったのです…」 どうして教えてないはずの自分の部屋がわかったのかというわたるの問いに、かなみは、ゆかりが自分の家に来て、わたるの部屋の住所を教えてくれたのだと呟く。 「青山…」 「それ…

雪月花ー1

立春を過ぎたというのに、寒さが続く日々…窓の外は…季節外れの雪が降る… 「かなみさん…」 皆川わたるは、自分の部屋の窓から外の雪を眺めながら、滅多に逢う事が許されない愛しき人の名を呼ぶ。 皆川わたると綾瀬かなみは、想い合ってはいるが、かなみがわた…

月光花-36

「あっ…んっ…はぁっ…んっ…」 白く澄んだ肌を淡いピンク色に染めながら、かなみは、乳房の上にある乳首をピンと立てながら、甘く息を吐き、身体を仰け反らし、細やかさを増すわたるの愛撫に溺れていく。 「こんなに固くして…でも嬉しいです…僕に…感じてくれて…

月光花ー35

「そういえば…どこに行っていたのですか…?」 「バレンタインデーに…女性が出かけるところといったら…一つしかありません…」 そういえば、どこかへ出かけていたみたいだけれど、どこに行っていたのかと訊ねるわたるに、かなみは、バレンタインデーに女性が出…

月光花ー34

数日後…この日は…バレンタインデー…女性がチョコを贈って愛を告白する日… この日は、わたるの誕生日でもあった。 「(やっぱり…今日は…無理だよな…)」 かなみの家に行く道すがら、わたるは、かなみの家の庭に花が咲いていないかどうか考えていた。 クリスマ…

月光花ー33

熱く乱れた後に訪れる静かな時間…わたるとかなみは余韻冷めやらぬ身体を寄せ合う。 「かなみさん…」 闇の中でかなみを抱き寄せたわたるは、かなみへの想いを伝えるように、かなみの額に口付ける。 「わたるさん…訊いてもいいですか…?」 「何ですか…?」 何…

月光花ー32

「あっ…んっ…はっ…あっ…んっ…」 「今日も…いい声ですよ…かなみさん…」 わたるの細やかな愛撫に、甘い声を漏らし続けるかなみに、わたるは、今日もいい声で啼いてくれていますねと囁きかける。 かなみが西田の腕の中でどんな声で啼くかは知らないが、わたるは…

月光花ー31

「かなみさん…そんな顔しないでください…押し倒しますよ…?」 燻り始めた熱を堪え切れないという表情を浮かべるかなみに、わたるは、そんな顔されるとこの場に押し倒しそうになるから、そんな顔をしないでくれと問いかける。 「押し…倒して…ください…その方…

月光花ー30

「あの…わたるさん…訊いてもいいですか…?」 「はい…何でしょうか…?」 何か聞きづらそうにしながら、わたるに問いかけるかなみを見たわたるは、優しく笑いながら問い返す。 「この間の…使わなかった手段って…どんな手段ですか…?」 わたるの問い返しに、か…

月光花ー29

「それでは」 「お気を付けて」 かなみに家から帰っていくゆかりを、かなみは笑顔で見送る。そこへ、わたるが日課となった花を確かめにやってきた。 「あれ?あれ、青山ですよね?かなみさん」 ゆかりが帰っていくのを見かけたわたるは、門の前に立つかなみ…

月光花ー28

「最初から勝負になっていないのに…勝負をしてしまって…ごめんなさい…」 「いいんです…過ぎた事ですし…」 初めから勝負になっていないのに、勝負を挑むようなことをしてしまった事を詫びるゆかりに、かなみは、過ぎた事だから気にしないでいいと答える。 「…