雪月花ー8

熱く乱れた後に訪れる沈黙の時間…かなみは、乱れた髪を直しながらわたるを見る。


「こうして…かなみさんを…見ていると…やっぱり夢のようです…ここに…かなみさんが…いる事が…」


 熱く乱れた余韻もそのままに、わたるは、かなみに、自分の部屋にかなみがいて、それでいて、かなみと交われた事が夢のようだと呟く。


「夢でも…なんでもありません…現に…さっきまで…」


 わたるの呟きに、かなみは、夢でもなんでもないと呟いた後、現にさっきまで熱く交わっていたじゃないかと呟く。


「わかってます…だって…僕の身体には…かなみさんが…たくさん残ってますから…」


 夢でもなんでもないというかなみの呟きに、わたるは、わかっていると呟いた後、続けて自分の身体にはかなみが立てた爪跡がたくさん残っていると呟く。


「痛くないですか…?ごめんなさい…」


「いいえ…謝らないでください…嬉しいんです…僕…かなみさんに…愛されてるって…感じがして…」



 あまりの絶頂に、無意識に爪を立てことを詫びるかなみに、わたるは、首を横に振ると、かなみに立てられた爪跡は、かなみに愛されてる印だと思ったら、嬉しくてたまらないのだと呟く。


「これで…逢えない日が何日も続いても…耐えられます…実を言うと…かなみさんに逢えない日は…悶々としていたんです…社長に抱かれてると思ったら…わかっていても…やっぱり…」


 じっとわたるを見つめるかなみに、わたるは、かなみが立てた爪跡がある限り、逢えない日が続いても耐えられると呟き、続けて、本当はかなみに逢えない日は悶々としていた、社長の西田に抱かれてると思ったら、かなみが西田の籠の鳥だとわかっていても、やっぱり悶々としてしまうと呟く。


「わたるさん…私も…同じようなものです…西田に抱かれていながらも…思い出すのは…あなたの…唇…熱い腕…熱い胸です…」


 わたるの呟きに、かなみは、自分も同じようなものだと呟いた後、続けて、西田に抱かれながら思い出すのはわたるの狂おしいまでに熱い愛撫だと呟く。


「私って…罪深い女ですね…」


「そんなことありません…罪深さで言えば…僕の方が…よっぽど罪深いです…」


 自分は何て罪深いのだろうと呟いたかなみに、わたるは、そんな事ないと呟き、罪深さで言ったら、自分の方がよっぽど罪深いのだと呟く。


 恋をしてはならない愛してはならないとわかっていながらも、わたるはかなみを愛していた…かなみもまた、わたるに恋をしてはならない愛してはならないとわかっていながらも、わたるに恋をして、わたるを愛していた。


互いにこれが罪深き想い、許されざる恋である事を十分に認識していた。地獄の業火に焼かれ、心爛れても、構わないほどに。