月光花ー28

「最初から勝負になっていないのに…勝負をしてしまって…ごめんなさい…」


「いいんです…過ぎた事ですし…」


 初めから勝負になっていないのに、勝負を挑むようなことをしてしまった事を詫びるゆかりに、かなみは、過ぎた事だから気にしないでいいと答える。


「あなたと…話してみて…わかりました…わたるが…惹かれていく理由…」


 ゆかりは、かなみに、かなみと話してみて、わたるがかなみに惹かれていく理由がわかったと呟く。


「あなたは…本当に…優しい人です…」


「優しくなんか…ありません…私は…あなたを傷つけてでも…彼の事を…」


 かなみは優しい人だと呟くゆかりに、かなみは、自分は優しくなんかないと答えた後、ゆかりを傷つけてでもわたるを求めてしまうのだからと呟く。


「わたるの家…あれから…行きましたか…?」


「いいえ…せっかく教えてもらったけれど…あの紙…失くしてしまったのです…」


 わたるの住んでいる部屋にあれから行ったことがあるのかと訊ねてきたゆかりに、かなみは、首を横に振ると、せっかく教えてもらったけれど、紙を失くしてしまったのだと答える。

本当は、いらないものになったと思って破り捨てたのだ。自分が持っていても仕方ないものだと思って。


「また教えます。わたるビックリすると思います。あなたがわたるを訪ねていったら」


 かなみの答えに、ゆかりは、またわたるの住んでいる部屋の住所を教えると告げ、かなみがわたるを訪ねていったら、わたるがびっくりするだろうと思うと声を掛ける。


「きっと喜びます。わたる、本当はあなたに部屋に来てほしいんだと思います」


 ゆかりは、かなみに、かなみがわたるの部屋を訪ねていったら、わたるは喜ぶと思うし、わたるは、本当はかなみに部屋に来てほしいと思っているのだと声を掛ける。


「そうでしょうか…?でも…あの人が帰るのは…いつも夜遅いから…」


 ゆかりに言葉に、かなみは、そうかしらと首を傾げた後、自分を囲っている西田が帰るのはいつも夜遅いから、無理なのではないかと呟く。


「あなたが来るって知っていたら、わたる、寝ていても飛び起きますよ。だって、あなたが好きでたまらない奴だから」


 かなみの呟きに、ゆかりは、かなみが部屋を訪ねてくれる事を知っていたら、わたるは寝ていても飛び起きるくらいに、かなみが好きなのだと答える。


「ありがとうございます…でも…ごめんなさい…」


「いいんです…わたる…あなたと出会ってから…イキイキしてます…デザインも…見違えるように変わったし…」


 わたるの部屋の住所が書かれた紙を受け取りながら、ごめんなさいと呟いたかなみに、ゆかりは、首を横に振ると、かなみと出会ってからのわたるはイキイキとしているのだと呟き、続けて、デザインも見違えるように変わったと答える。