「そういえば…どこに行っていたのですか…?」
「バレンタインデーに…女性が出かけるところといったら…一つしかありません…」
そういえば、どこかへ出かけていたみたいだけれど、どこに行っていたのかと訊ねるわたるに、かなみは、バレンタインデーに女性が出かけるところといったら、一つしかないと答える。
「もしかして…チョコとか…?」
「えぇ…手作りは間に合わなかったのですが…」
もしかして、チョコを買いに行ってくれていたのかと訊ねるわたるに、かなみは、頷いた後、手作りチョコは時間がなくて作れなかったが、チョコは買って来たと答える。
「まず、最初に…これは…バレンタインのチョコレートです…そして…これが…誕生日のプレゼントです…」
「ありがとうございます…いままでで一番嬉しいです…お礼といったら…なんですが…これ…約束の物です…」
かなみからバレンタインのチョコと誕生日のプレゼントのカシミアのマフラーをかなみから受け取ったわたるは、嬉しそうに笑うと、いままでで一番嬉しいとかなみに呟いた後、かなみに紙袋を渡す。
それは、以前からかなみと約束していたわたるがデザインを手がけた帯だった。
「これが…わたるさんが初めてデザインした物ですか…?」
「そうです…お気に召すか…わかりませんが…」
紙袋に入っていた帯を見たかなみは、これがわたるが初めてデザインを手がけた物かと問いかけ、わたるは、そうだと答えた後、かなみの目に適う物かわからないけれど、かなみに似合いそうな物を考えながらデザインしたのだと呟く。
「綺麗です…」
「そうですか…?初めてだから自信はなかったのですが…」
綺麗な柄だと感心するかなみに、わたるは、和装小物をデザインするのが初めてだったから自信がなかったのだと呟く。
「いいえ…こんなに綺麗な帯…中々ないです…」
「そうですか…?洗練された目を持っているかなみさんに褒めていただけて嬉しいです…」
こんなに綺麗な帯は中々ないと感嘆するかなみに、わたるは、洗練された目を持っているかなみに褒めてもらえて嬉しいと呟く。
「ありがとうございます…わたるさん…あと…誕生日…おめでとうございます…」
「ありがとうございます…かなみさんに…祝ってもらえて…嬉しいです…」
帯を贈ってくれたお礼とわたるの誕生日を祝う言葉を呟いてきたかなみに、わたるは、かなみに誕生日を祝ってもらえて嬉しいと呟き、 自分が犯した一夜の過ちによって、かなみを哀しませたけれど、こうして誕生日を祝ってくれたかなみを哀しませる真似は絶対にしないと心に誓いながら、わたるはかなみに口付ける。