数日後…この日は…バレンタインデー…女性がチョコを贈って愛を告白する日…
この日は、わたるの誕生日でもあった。
「(やっぱり…今日は…無理だよな…)」
かなみの家に行く道すがら、わたるは、かなみの家の庭に花が咲いていないかどうか考えていた。
クリスマスイブとお正月を一緒に過ごせたから、さすがにバレンタインデーそして自分の誕生日は、一緒に過ごせないだろうと思っていた。
しかし、今日は、恋人たちが愛を語る日。奇跡は起こるものである。
「(あ、花が…ある…)」
花にしては少し奇抜だが、黄色い花が、かなみの家の庭を飾っていた。花があるという事は、かなみと過ごせるという事である。
「(かなみさん…)」
クリスマスイブとお正月に続いて起こった奇跡に近い出来事に、わたるの胸は躍る。
「ミモザアカシアといって…二月十四日の誕生花なのですよ…わたるさん」
「かなみさん…」
後ろから聞こえてきたかなみの声に、わたるは少し驚きながらも、かなみの姿を見つけ、嬉しそうに笑う。
「珍しいですね…いつもは…和のイメージのある花を選ぶのに…」
「今日は私の好きな人の誕生日ですから…誕生花を選びました」
いつもは和のイメージの花を選ぶのに、今日は洋のイメージのある花を選ぶなんて珍しいと呟いたわたるに、かなみは、今日は、好きな人の誕生日だから、誕生花で花を選んだのだと答える。
「好きな人の誕生日って…まさか…僕ですか…?」
「他に誰がいるのですか…?」
好きな人の誕生日とは、自分の誕生日を祝ってくれるという事なのかと問いかけてきたわたるに、かなみは、他に誰がいるのかと笑いかける。
「嬉しいです…でも…どうやって…僕の誕生日を…」
わたるは、嬉しいと呟いた後、続けて、どうして自分の誕生日を知ったのか問いかける。
「とある情報網です…」
「青山ですね…?」
わたるの問いかけに、かなみは、とある情報網だと笑うかなみに、わたるは、ゆかりに教えてもらったのですねと問いかける。
「どうしても外せない用事があるからと言って、西田に来ないようにしてもらいました」
「かなみさん…」
かなみが今日という日をわざわざ空けてくれた知ったわたるは、嬉しくて、胸が躍っていくのを感じた。
バレンタインデーでもあり、自分の誕生日でもある今日を空けてくれた事を喜ぶ自分を感じていた。