「かなみ…さん…」
「はい…」
「あの…」
「何でも言ってください…」
かなみを抱き締めたい衝動を堪えるかのように、かなみを見つめるわたるに、かなみは、ここでは何でも自由に言っても構わないと笑いかける。
「かなみさん…聞き飽きているかも…しれませんが…あなたが好きです…」
「私も…です…」
聞き飽きているかもしれないが、かなみが好きだと呟くわたるに、かなみは自分もわたるが好きだと返す。
「ここは…私とあなただけの…秘密の場所です…誰の遠慮もいりません…」
「かなみさん…」
ここはどんな秘密も守られる自分とわたるだけの秘密の場所だから、誰の遠慮もいらないと呟いてきたかなみを見つめたわたるは、かなみを抱き寄せ、想いの限り抱き締める。
「ずっと…逢いたかったです…」
「私も…です…西田に抱かれていても…思い出すのは…あなたの事ばかりでした…」
ずっと逢いたかったと呟くわたるに、かなみは、自分もそうだと呟き、続けて囲い主の西田に抱かれていても、思い出すのは、わたるの事ばかりだったと呟く。
「かなみさん…」
「わたるさん…」
呼び合う声が重なった瞬間、二人の影も重なり合う。
まだ、夕闇も下りてはいないが、わたるは、かなみを布団の上へと横たわらせる。
布団の上に横たわったかなみの白い肢体には、まだ、西田の痕跡が残ってはいるが、わたるはそんな事お構いなしだった。
かなみが西田の籠から出て、自分の手の中で、また素敵な声で歌ってくれる…まだ数えるほどしかないが、これから増えていく秘密の時間に心がときめいていくのをわたるは感じていた。
かなみもまた、西田の籠から出られるこの時をずっと待っていた。
時間が来れば、戻らなければならないが、いまは、わたるの腕の中で、西田には見せない姿で、声で、わたるを呼び、わたるを求める。
「わたるさん…あぁっ…」
いつにもまして、細やかさが増したわたるの愛撫に、かなみは、乱れ咲く花へと変貌し、わたるを受け入れる蜜を溢れさせている。
花弁も花芯もそして蜜壺もわたるを受け入れる準備は万端で、わたるが触れてくれるのをいまかいまかと待ち望んでいた。