花灯篭ー29

「じゃあね。わたる」


「あぁ」


 葉牡丹を見て帰っていくゆかりを見送ったわたるは、呼び鈴を鳴らしてからかなみが出てくるまでの間、葉っぱにしか見えない葉牡丹を眺める。


「花とは言いづらいですが…お正月くらいまで飾るものなのですよ…」


「かなみさん…」


 わたるが葉牡丹とにらめっこしている間に、かなみはやってきて、葉牡丹は花とはいいにくいが、お正月まで飾るものなのだとわたるに説明する。


「かなみさん…これは…一緒に…過ごしてくれると…取ってもいいのですか…?」


「はい…クリスマスらしいものはありませんが…」


「いいえ…かなみさんと過ごせるだけで十分です…」


 葉牡丹は一緒に過ごしてくれる印ととってもいいのかと訊ねるわたるに、かなみは、クリスマスらしいものはないけれど、そうだと頷き、返事を聞いたわたるは、かなみと一緒に過ごせるだけで十分だと答える。


 聖なる夜に二人で過ごす夜…秘密の関係である事には変わりはないけれど、少しだけ、普通の恋人同士と同じように過ごせる夜が嬉しい。


「お正月は…どうされるのですか…?」


 突然…かなみが、わたるにお正月の予定を聞いてきた。


「毎年…寝正月です…」


 お正月の予定を訊かれ、お正月は一緒に過ごせないと思ったわたるは、毎年寝正月だと答える。


「葉牡丹は寒さに強いのですよ…」


「えっ…?それって…」


 葉牡丹は寒さに強いから、出しっぱなしにしても大丈夫だと呟いたかなみに、わたるは、葉牡丹を出しっぱなしするってことは、お正月も一緒に過ごしていいのかと問いかける。


「そうですね…西田は…本宅の方々と旅行に出かけますし…」


 お正月も一緒に過ごせるのかというわたるの問いに、かなみは、西田は本宅の方々と旅行に出かけると呟いてきた。


「葉牡丹…置きっぱなしですよね…?」


「そうですね…」


葉牡丹は庭に置きっぱなしかというわたるの問いに、かなみはそういう事になると笑いかける。また一つ、二人だけで過ごせる時間が増えたとわたるの胸は躍る。


「年越しも…もちろん…入ってますよね…?」


「もちろんです…」


 年越しも一緒に過ごしてくれるのかと訊ねるわたるに、かなみは、年越しも一緒に過ごせると答えた後、嬉しそうに笑うわたるに笑いかける。