愛しき罪ー47

「もう…朱里しかいらないんだ…僕は…」


 無言で自分を見つめる朱里に、弓月はもう朱里以外の何もいらないのだと呟き、朱里の涙で腫れた瞼に口付ける。


「(弓月…さん…)」


 自分の泣き腫らした瞼に唇を寄せられた朱里は、もうこれ以上、弓月を拒み続ける事ができない事を感じていた。


「僕の命は…もう…朱里の物だ…そして…朱里の命も…僕の物だ…」


「弓月…さん…」


 もう自分の命は朱里の物で、朱里の命もまた自分の物だと告げる弓月を、朱里は、もう弓月を拒む術はないと見つめていた。


「恋が…こんなに…苦しいなんて…知らなかった…」


「僕も…そうだよ…」


 損得なしで恋愛をする事なんてなかったと呟いた朱里に、弓月は、自分もまたそうなのだと答える。


誰もが羨む幸せで静かな生活を捨ててまでも誰かを欲したのは初めてだと…


「乗って…朱里…行こう…僕たちを待ち受ける地獄へと…」


 朱里の手を取った弓月は、朱里に自分の車の乗るよう促し、あの夜同様、自分達を待ち受ける地獄へと共に旅立とうと呟く。


「弓月さん…本当に…後悔しないの…?」


「しないよ…朱里に魅入られた時から…それはどこかで…覚悟していた…」


 自分と本当に旅立って後悔しないのかと問いかける朱里に、弓月は、朱里に魅入られた時から、それは心のどこかで覚悟していたから、後悔などしないと答える。


愛しき罪を更に重ねようとする朱里と弓月に、神がどこまで寛容なのかは誰にもわからない。