「朱里…もう一度言うよ…朱里の命は…僕の物だ…」
朱里の呟きを聞いた弓月は、もう一度言うから、ちゃんと聞いて欲しいと前置きした後、朱里の命は自分の物になったのだから、もう二度と自らの命を絶つような真似はしないで欲しいし、自分がさせないと呟く。
「生きる道を選ぼう…それが例え…辛く険しいものであっても…」
これからは何よりも生きる道を選ぼう…それが例え、辛く険しい道であったとしても、生きる道を選ぶのだと、弓月は朱里に囁きかける。
「朱里…もう一度言うけど…生きるんだ…生きた先に幸せはあるんだよ…」
弓月は、朱里の方に身体を向けると、朱里に、もう一度言うけれど、生きるのだ、生きた先に幸せは待っているのだと諭すように囁きかける。
「弓月さん…えぇ…そうしてみる…弓月さんが…そう言うのなら…そうなのかもしれないから…」
弓月の囁きに、朱里は、いままで考えた事がなかった生きる事について考え、生きる道を模索してみると答える。
弓月が生きる先に幸せが待っているというのなら、そうなのかもしれないと、朱里は思い始めていた。
「朱里…」
「弓月さん…」
互いの名を呼び合い、指を絡ませた朱里と弓月は、引き寄せられるように、互いの唇を重ねる。
出逢いが遅すぎて、互いに傷付け合った朱里と弓月の愛しき罪の始まり…
それが…いま…朱里と弓月は、互いを求め合っている…そして…朱里と弓月は…死出の旅路を選ばずに…辛く険しい生きる道を選んだ…
愛しき罪とは何か…それは…誰にもわからない…わからないけれど…人は誰しも愛しき罪を犯しているのだという事を…人は知ってるのだろうか…?人は誰しも愛しき罪を重ねる罪人なのかもしれない事を人は知っているのであろうか…?
終わり