愛しき罪ー44

それから…一か月後…


デリヘルの仕事を終えて部屋に戻って来た朱里は、部屋があるマンションの前に見覚えのある車が止まっているのを目にする。


「(弓月さんの車によく似てるわね…でも…あんな車…日本中…いや…世界中に走っているんだから…弓月さんの車なわけないわよ…)」


 一瞬、弓月が来たのかと思ったが、弓月が乗っている車なんて日本中いや世界中走っているに違いないからと似た違う車だと朱里は自分に言い聞かせる。


「待ってたよ…携帯にも出ないから…帰ってくるの…待ってたよ…」


 嫌な予感は当たるもので、弓月の乗っている車じゃないと朱里が思いこもうとした矢先、車から降りてきた弓月は、朱里が携帯にも出ないから帰りを待っていたのだと朱里に告げる。


「弓月さん…帰ってください…私たちはもう逢うべき仲じゃないんです…」


久々に見る弓月の姿に心がときめくのを感じながらも、朱里は、自分達はもう逢うべき仲じゃないのだから、このまま帰るよう告げる。


「朱里…」


「もうその名で呼ぶのはやめてください…」


 たった一夜しか呼ばれていない名だが、その名で呼ぶ弓月に、朱里は、もう自分をそんな風に呼ばないで欲しいと告げる。


「夜も遅いですから…奥さん…心配してますよ…」


「どうして…そんなに素っ気なくなれるんだい…?」


深夜も深夜の時間にこんなところに居たら、弓月の奥さんが心配していると告げる朱里に、弓月はどうしてそこまで自分に素っ気なくなれるかと問いかける。


「それが…私の病気なのでしょうね…」


 弓月の問いかけに、朱里は、それが自分の病気なのだろうと弓月に告げる。