「帰って…お願いだから…帰って…」
これ以上弓月を目の前にすると、泣きすがりたい衝動を抑えられなくなると思った朱里は、弓月にお願いだからもう帰って欲しいと呟く。
「帰らないよ…正確には…帰れない…自分に嘘を吐く朱里を放ってなんか…帰れない…」
お願いだから帰って欲しいと呟く朱里に、弓月は、自分に嘘を吐き続ける朱里を放って帰れないと返すと、朱里を抱き寄せる。
「やめて…これ以上は…」
「これ以上の事をしたら…何…?」
これ以上の行為に及ばれると自分を保てなくなると思った朱里は、弓月にこれ以上の行為に及ぶなと呟き、その呟きを受けた弓月は、これ以上の行為に及べばどうなるのかと問い返す。
「私たち…次はないのよ…」
「わかってるよ…だから…こうして…」
自分達には次はないのだと呟く朱里に、弓月はわかっていると答えた後、だからこうして朱里に逢いに来たのではないかと呟き返す。
「今度は…クビは免れないのよ…」
「うん…わかってるよ…」
今度知られたら、弓月は路頭に迷うかもしれないのだと呟く朱里に、弓月は、わかっていると答え、朱里を抱き締め続ける。
「看護師しかできないじゃない…弓月さんは…」
「うん…でも…朱里を知らなった頃には戻れない…」
弓月に看護師以外の仕事などできるはずがないじゃないかと呟いた朱里に、弓月は、それはそうだけど、朱里を知らなかった頃になど戻れないと返す。
朱里に傷付けられたけれど、その傷は朱里でしか癒せないのだと返す。