白い闇ー40

 碧の住むかつて自分が住んでいた町に降り立った源太は、真っ先に、碧と雅彦が暮らす邸宅へとひた走る。


碧を雅彦の狂気から救い出せるだけの力を備え付けられた…後は、碧をこの手で奪う事だけ…希望と言ってくれた碧に応える為にも、源太は碧を一刻も早くこの手に抱き締めたくてたまらなかった。


「碧さん」


「須本…君…?」


 源太が声の限りに叫んだ碧の名に、反応した碧は、もしかして希望の日が訪れたのかもしれないと、源太の声がした方向へとひた走る。


「碧さん…僕…」


「いいの…何も言わないで…」


 碧を救い出せるだけの力を備え付けてきたと言おうとした源太の言葉を遮るように、碧は、何も言わなくてもわかっていると呟く。


「あの…根本先生は?」


「留守にしているわ」


 折角の計画も雅彦がいれば、水泡に帰すと思った源太は、雅彦の在宅を碧に確かめ、留守にしているという言葉を聞いた源太は、碧を連れ出せるのはいましかないと思った。


「碧さん。行きますよ」


「どこへ?」


 源太は碧の手を取り、ここから出るのだと告げ、ここから出るのだと告げられた碧は、どこへ行くというのだと源太に訊ねる。


「希望に繋がる場所です…碧さん、急いで」


 碧の問いに、源太は、希望へとつながる場所だと答え、時間がないから急ぐよう碧に告げる。