白い闇ー39

 それから…源太は弁護士としてのスキルを上げるために、懸命に働いた。


法で縛られている碧を救い出せるのは、やはり、法でしかないとばかりに、源太は弁護士としてのスキルを上げていくために、そして、碧を救い出すために懸命に働いた。


「(どこかに…あるはずだ…碧さんを救い出すための…手段が…)」


 弁護士としての業務をこなしながら、源太は、必ず碧を雅彦の狂気から救い出せる手段が法にあるはずだと、分厚い六法全書を隅から隅まで読み続ける。


 碧は、十三歳の頃から雅彦と住み始めたと言っていた…それなら…児童虐待だと言えるかもしれない…それに…愛のない夫婦生活など、既に婚姻の意味を果たしていない。


いまは、夫婦間でも強姦罪が成立する時代…碧の同意のない営みなど強姦そのものだと源太は、法には法で立ち向かうしかないと心に誓う。


一方…碧は、いつか訪れるかもしれない源太に救い出してもらえる日に思いを馳せる。


その日が必ず訪れなくてもいい…だが、この希望の光は生涯消えない光となってくれるに違いないと感じていた。


「(須本君…私は…あなたが…あの頃と違うというだけで…十分よ…)」


 今夜も始まる雅彦の狂気の時間…しかし、碧にはかつてない程の希望が湧き上がっていた。


どんなに雅彦に蹂躙されても消えない希望の光が碧には見えていた。


源太によって見出され、源太によって灯された希望の光…碧は、そう遠くない未来に希望の光が現実になってくれる事を心の中で待ち望み続ける。


逃れられないと思っていた白い闇が晴れていくような感覚に、碧は、源太が必ず自分を救い出してくれる事を確信していた。


「碧…何を考えている…?」


 同窓会以来、瞳に輝きを取り戻した碧に、雅彦は、いま、何を考えているのかと訊ねる。その問いに、碧は、軽く笑うだけで、雅彦に対して何も答えない…その姿に、源太が少年から大人になり、自分が老いていく事を感じずにはいられなかった。