平安恋奇譚ー14

 それから何度も何度も蒼に貪られたまりは、蒼の甘く惑わすような声を聞きながら意識を手放した。


「今日も…いい子だ…まり…」


 それからしばらくして…


「おはようございます…まり様…」


「おはよう…ございます…」


 枕元に聞こえてきた小梅の声に、飛び起きたまりは、小梅におはようを返す。


「いまどれくらいですか…?」


「そうですねぇ…お昼過ぎって…ところですかね…」


 いま、何時かと訊ねたまりに、小梅は、お昼過ぎくらいだと答える。


「お昼過ぎ…そんなに…寝てたのですか…?」


「休まれたのが朝方でしたでしょうから…そんなに時間は経ってません…」


 昼過ぎまで眠った事がなかったまりは、そんなに眠っていたのかと小梅に訊ね、訊ねられた小梅は、蒼に解放されたのが朝方だっただろうから、そんなに時間は経っていないと答える。


「どうして…私が蒼様に解放された時間まで知っているのですか…?」


 聞き耳を立てられていたのではないかというくらいに、詳しい小梅に、まりは、恥ずかしさがこみ上げてくるのを堪えながら、どうしてそんなに詳しいのかと問いかける。


「それは秘密です」


 まりの問いかけに、小梅は、聞き耳を立てていたわけではないが、どうして詳しいのかは秘密だと笑う。


「秘密ですが…蒼様のご機嫌を見ればすぐにわかります…」


 なぜ、知っているかは秘密だが、蒼の機嫌を見ればわかるのだと笑いかける。