2015-02-04から1日間の記事一覧

平安恋奇譚ー38

子守唄が聞こえる…小梅の腕の中には可愛い赤子が抱かれていた。 「久しぶりだな…小梅…」 「いきなり現れないでください…」 いきなり庭先に現れた柚木に、小梅はいきなり現れるなと呟く。 「ほぉ…ついに…生まれたのか…」 「えぇ…」 小梅の腕の中に抱かれてい…

平安恋奇譚ー37

「まり…その櫛…使ってみてくれないか…?」 「はい…」 贈った櫛を使ってみてくれと言う蒼に、まりは、はいと答えると、贈られた櫛で髪をとかし始める。 「どうだ…?」 「櫛を使うのが初めてだから…わからないけれど…使いやすいです…」 櫛の使い具合はどうかと…

平安恋奇譚ー36

「まり…これを…」 「なんですか…?」 恥ずかしげに箱を渡す蒼に、まりは、この箱は何かと訊ねる。 「開ければわかる」 「はい…」 照れくさそうに箱を開ければわかると答える蒼に、まりは、箱を開けて中身を見る。 「うわぁ…綺麗な櫛…」 箱を開けたまりは、中…

平安恋奇譚ー35

「口付けは…初めて会った時…以来です…」 「そうだったな…」 口付けられるのは、初めて会った時以来だと呟くまりに、蒼は、そうだったなと答え、まりに深く口付ける。 「蒼…様…」 「私たちは…もう夫婦だ…様はいらない…」 いつものように蒼を呼んだまりに、あ…

平安恋奇譚ー34

熱い…寒い…冷たい…痛い…苦しい… あらゆる苦しみがまりに襲いかかり、まりは死を覚悟した。 蒼を想う苦しみから逃れる手段として蒼との交わりに溺れていた。 だから、もういいのだと… 「まり…死ぬな…お前が死んだら…私は…どうすればいい…」 朦朧とする意識の…

平安恋奇譚ー33

「小梅、なぜ、私の血を飲ませた」 まりを抱き抱えながら、蒼は、小梅を睨みつけ、なぜ、まりに自分の血を飲ませたのだと詰め寄る。 「飲んだのは、彼女の意志です」 「私の血を飲む危険性を言ってなかっただろ」 蒼の血を飲んだのはまりの意志だと答える小…

平安恋奇譚ー32

「ちょっと…待っててくださいね…」 小梅は、まりに、少しの間待っててくれと言い残し、部屋を出ていく。 「お待たせしました。さぁ、これをお飲みください」 しばらくして戻って来た小梅は、まりに、湯呑みを渡し、中に入っている液体を飲むよう催促する。 …

平安恋奇譚ー31

「(どうしよう…私…本当に…蒼様を…好きになっちゃった…)」 蒼が執務に向かい、小梅を下がらせて、ひとりになったまりは、あれだけ心を奪われてはいけないと言われていた蒼を本気で好きになってしまった事に涙する。 飽きられたら捨てられる…捨てられたら生…

平安恋奇譚ー30

「私を…求めるまで…イカせてやらないぞ…」 蒼が欲しいと言わないまりに、蒼は、まりが自分を求めるまで焦らし続けるぞと囁く。 その言葉通り、蒼は、まりがいきかけたら、愛撫の手を止め、まりに決定的な刺激を与えない。 蒼に焦らされながら、まりは、喉元…

平安恋奇譚ー29

「まさか…ここでするのですか…?」 路地裏の壁に背中を押し付けられたまりは、蒼に、まさか、ここで事に及ぼうというのではないかと問いかける。 「そうだ…ここで…いつものようによがるのだ…それがお仕置きだ…」 まりの問いに、蒼は、まりの着物の前を肌蹴さ…

平安恋奇譚ー28

「まり」 「え?あ、蒼様…」 都のはずれに残してきた家族を思い出していたら、蒼が戻って来ていた事に気付かなかったようで、不機嫌そうにまりを見る蒼に、まりは、申し訳なさげに蒼を見上げる。 「何度も声を掛けたのに、気付いてなかったな」 「すみません…