平安恋奇譚ー31

「(どうしよう…私…本当に…蒼様を…好きになっちゃった…)」


 蒼が執務に向かい、小梅を下がらせて、ひとりになったまりは、あれだけ心を奪われてはいけないと言われていた蒼を本気で好きになってしまった事に涙する。


飽きられたら捨てられる…捨てられたら生きていけないくらいに蒼に惹かれている…しかし、不死身の蒼と寿命がある自分とでは生きる時間が違うのだ…歳を取ったらどうせ捨てられる…そんな不安に、まりは、ひとり泣き続ける。


「まり様…少しは…お食べにならないと…」


 蒼を本気で好きになったがゆえに捨てられる不安で、食欲を失くしたまりに、小梅は、少しでも食事を取らないと体力が持たないと声を掛ける。


「ごめんなさい…食欲なくて…」


 小梅の気遣う言葉に、まりは、どうしても食欲がないのだと答える。


「そんなに…蒼様が…お好きですか…?」


 食欲が完全に落ちてしまったまりに、小梅は、食欲がなくなるくらいに蒼が好きなのかと問いかける。


「どうしてわかるのですか…?」


「見ていればわかります…私も女ですから…私の場合は…幼子ですが…」


 どうして蒼を本気で好きになってしまった事がわかるのかと問いかけるまりに、小梅は、自分だって女なのだから、それくらいすぐわかると答える。


「でも…いつまでも…一緒にはいられないのですよね…不死身の蒼様と寿命がある私では…」


 まりは、いくら好きになっても、不死身の蒼と寿命がある自分はいつまでも一緒にいられるわけではないのだろうと呟く。


「方法ならありますよ…蒼様と永遠にいられる方法なら…」


 まりの呟きに、小梅は、蒼と永遠にいられる方法ならあるにはあるのだと答える。