平安恋奇譚ー10

「食事って…普通なんですね…」


 小梅が運んできた食事を見たまりは、魔物というからもっとゲテモノの食事が運ばれてくると思っていただけに、ごく普通の食事に驚く。


「蒼様くらいの方は…人間とさほど変わらない食事をしても平気なのですよ…」


 食事が普通である事に驚くまりに、小梅は、蒼くらいの魔力を持っていると、人間とさほど変わらない生活をしても平気なのだと答える。


「さぁ…おあがりください…夜までに体力を付けておかなければ…」


 見た事のない食事の数々に驚くまりに、小梅は、夜までに体力を付けておかなければいけないのだから、食事をするように催促する。


「蒼様から精を付けておくようにとの事でございます…」


「精…ですか…」


 蒼から精を付けておくようにという言付けを受けているという小梅に、まりは、なんだかとんでもないところに来てしまったといまさらながら思っていた。


「いただきます…」


 せっかくの食事だから、食べておこうと思ったまりは、いままでだったら食べられない食事を口にし、かつてない程の満腹感を感じていた。


 しかし、いきなり居なくなった自分を家族は心配していないだろうか?右大臣は家族の生活は保証してくれると言っていたが、本当だろうか?


「どうされました?」


「いいえ…あまりのご馳走に驚いているだけです…」


 表情が曇ったようだけど、どうかしたのかと問いかけてきた小梅に、まりは、あまりのご馳走に驚いただけだと答える。


「こんなに…たくさん食べたの…初めてだから…」


 まりは、小梅に心配かけないように、こんなにたくさん食べたのは初めてなのだと呟く。