「どうして…私が…身代わりだと…?」
たった一瞬で、身代わりだと見抜いた魔物の王に、まりは、どうして一瞬で身代わりだと見抜いたのかと訊ねる。
「人は生まれながらに魔力がある…あの姫君の魔力は研ぎ澄まされたものだが、お前の魔力は打ち据えられた強さを持っている…」
まりの問いに、魔物の王は、あの姫君とまりでは生まれ持った魔力が違うのだと答える。
「まったく違う魔力を持ったお前を私に寄越したという事は、あの陰陽師…お前を私が気に入ると思ったのだろう…」
騙せるわけがなかったのだと落ち込むまりに、魔物の王は、あの陰陽師は、身代わりのまりを気に入ると踏んだのだろうから、どう楽しませてくれるのかと問いかける。
「(色仕掛けなんて…やった事ないし…第一…私より…色気ありそうだし…)」
まりは考えた。自分よりも色気のある魔物の王に色仕掛けは通じないだろうし、だが、このままだと本物の姫君を奪いに行くだろう…そうしたら、家族を守れない。
「どうした…?私を楽しませてくれないのか…?それなら…本物の姫君を貰いに行くだけだ」
「待って。行かないで。私は家族を守らないといけないの」
本物の姫君を貰いに行こうとする魔物の王に、まりは必死にしがみ付いた。
本音を出してしまったが、もうなりふりかまってはいられない。
「お前は家族を守りたい…私は…伴侶が欲しい…お前は…何を差し出す…?」
「私の…すべてを…あなたに…差し出します…」
家族を守りたいなら、何を差し出すのかと魔物の王に問いかけられたまりは、自分のすべてを魔物の王に差し出すと答える。
「面白い…取引成立だ…精々…私に飽きられないように頑張るのだな…」
自分のすべてを差し出すというまりの言葉に、魔物の王はふっと笑い、まりに口付ける。