平安恋奇譚ー1

 時は平安、都にそれは美しいと評判の姫君がいた。


帝自ら入内を希望するほどの姫君で、帝自らの希望とあってその姫君は、近々入内する予定であった。


 しかし、そこへ魔物の王と名乗る者からその姫君をもらうという通達がその姫君のもとに届けられた。


 姫君の父の右大臣は困り果て、陰陽師の力を借り、身代わりを立てることにした。


 ここは都のはずれ。ここに、まりという名の娘がいた。


この娘は、都で評判の姫君と瓜二つで、日々の畑作業に追われていなければ、その姫君と区別がつかないくらいに瓜二つだった。


 母親を早くに亡くし、病気の父と幼い兄弟を抱えながら、まりは、すぐ下の弟と一緒に畑仕事や小さな仕事をもらいながら、細々と暮らしていた。


「もし、そなたがまりという娘か?」


「はい…そうですけど…」


 いつもの畑仕事をまりが一人でこなしていたら、都人だとわかる服装の男に声を掛けられ、まりは、都人が自分に何の用だろうと思いながら、都人のもとへと近寄る。


「確かに…似ている…これなら…」


 まりの泥だらけだが、姫君と同じ容姿を見た都人だと思われる男は、まりの容姿に納得する。


「実は、我が主人の右大臣の姫君が魔物の王と名乗る者から求婚された。だが、姫君は帝のもとへ入内することが決まっている。だから、あなたに姫君の身代わりを頼みたい」


 都人だと思われる男は、まりに、事情を説明し、自分と共に来て欲しいと告げる。


「身代わりなんて…第一…私の家族に何と言えばいいのですか…?」


 いきなり身代わりとして魔物の王と名乗る者に嫁げと言われたまりは、自分の家族に何と言えばいいのかと問いかける。