禁区ー30

「槙田さん…」


「はい…」


 抱き寄せる力を弱め、自分を見つめてきた雪田に、晴美は何かが起きる前兆を感じながら雪田の方に向き直る。

今夜の雪田はいつもと違う…それなら自分もそれに従おうと…晴美は思っていた。


「もし…今夜の僕がおかしいのなら…君もおかしくなってくれるか…?」


 晴美に対して違う感情を今夜の自分は抱いている事を感じた雪田は、晴美の髪をかき上げながら、もし、今夜の自分がおかしいのなら、晴美もおかしくなってくれるかと問いかける。


「はい…」


 雪田の問いかけに、晴美はもう答えを一つしか用意していなかった。雪田に抱き寄せられた瞬間から、晴美は雪田とキス…いやそれ以上の関係を結んでしまうことを心のどこかで予感していた。