「先生がいいのなら…」
元の主治医としての自分に今は戻れないと言う雪田に、晴美は雪田がそれでいいのならそれでいいと呟く。
「槙田さん…」
「槙田さんじゃなくて…晴美…今夜はそう呼んでくれますか…?」
自分を本名の名字で呼ぶ雪田に、晴美は名字ではなく名前で呼んで欲しいと問い返す。
「晴美か…偽名じゃないよね…?」
「もう…先生に嘘はついていません…」
病院のカルテに書いてある本名を呼んでくれるかという晴美の問い返しに、雪田はそれが本名である事をわかりながらも、偽名は使っていないねと問い返し、晴美もまた、もう雪田に嘘はついていないと答える。
そこから二人に言葉はなかった。自然と唇が合わさり、その口付けは自然と深いものになり、お互いの服に手を掛けるようになっていく。恋とは違う何かに二人は押し流されていく。