2015-03-08から1日間の記事一覧

大奥恋絵巻ー34

表での政が残っているという家治の言葉に従い、庭の散策は終わったが、お妙が大奥へと帰る際に、家治は、お妙に囁いた。 今宵もそなたを所望すると。 その日の夜…順序を踏まえたお妙を寝所に所望する手続きを終えて、お妙が寝所で家治を待っていると、家治が…

大奥恋絵巻ー33

「お妙…それは…もしかして…」 「これ以上は教えて差し上げません…」 もしかして、それは自分だと思っていいのかと呟く家治に、お妙は、もうこれ以上は教えてやらないと笑いかける。 「きちんと言ってくれ…でなければ…自惚れてしまう…」 お妙からの思わぬ言葉…

大奥恋絵巻ー32

「お前たち…何も言わなくてもいいのか…?」 ただ見つめ合っただけで全てを悟るお妙と蔵之介に、家治は、どこか嫉妬をめいたものを感じながら、お妙と蔵之介に声を掛ける。 「佐久間様…私は…上様と大事な話があります…」 「わかりました…私はこれにて失礼させ…

大奥恋絵巻ー31

「お妙…城の庭を散策しよう…」 ある日、お妙は、家治から城の庭を散策しないかと切り出される。 大奥に上がって以来、外に出る事が少なかったので、お妙は喜んでそれを受け入れる。 「素晴らしい景色です…」 「よかった…ここのところお妙がふさぎ込んでいた…

大奥恋絵巻ー30

「お妙…最近…顔色悪いな…」 寝所で自分に抱き寄せられながら、どこか青い顔をしているお妙に、家治はどこか体調でも悪いのかと問いかける。 「何でもありません…いらぬ気遣いさせてしまって申し訳ございません…」 家治の問いに、お妙は首を横振ると、家治に…

大奥恋絵巻ー29

お菊が反撃に出た…自分の親類縁者の娘をかき集めて、お妙が月経で家治の相手ができない事をいいことに、家治の覚えめでたそうな娘を家治に差し出す。 しかし、お妙ほどの覚えはめでたくなく、寝所を共にしても、お妙の時のように朝まで解放しないようなこと…

大奥恋絵巻ー28

狂おしいまでの激情と欲情に狂った家治に、お妙が解放されたのは、やはり、夜明け前だった。 その家治の様子に、お妙が家治の不興を買ったのではないかという噂はたちまちに消え、変わらず寵愛を一身に受けているという話が大奥中を駆け巡る。 「お菊…悔しい…

大奥恋絵巻ー27

「できるなら…そなたが心をくれるまで…そなたを抱いて抱き尽くしたい…だが…そうしたら…そなたの心は離れていく…」 自分の呟きを静かに聞くお妙に、家治は、できるなら、お妙が心をくれると言うまで抱いて抱き尽くしたいけれど、そうしたらお妙の心は離れてい…

大奥恋絵巻ー26

「私は…あの夜から…上様のお心が見えなくて…不安でした…」 家治の問いに、お妙は、自分の心が欲しいと言いながら、自分を狂おしいまでに求める家治の心が見えなくて不安だったと答える。 「上様…なぜそこまで…私の心が欲しいのですか…?」 お妙は、自分の返…

大奥恋絵巻ー25

お妙が家治の不興を買ったかもしれないという憶測が経ってから十日くらいした頃、久々にお鈴廊下の鈴が鳴った。 お鈴廊下の鈴が鳴るという事は、将軍のお渡りがあるという事である。 久々に鳴ったお鈴廊下の鈴に、今日は誰が所望されるか、大奥は色めき立つ…

大奥恋絵巻ー24

それから数日たっても、家治はお妙以外の女子を所望する事はおろか、大奥に渡りさえしなかった。 毎夜の如く大奥に渡っては、お妙を所望していた家治が大奥に渡らない現実に、お妙以上に、周囲がざわめきだした。 お妙が不興を買ったに違いない…ならばなぜ他…