お菊が反撃に出た…自分の親類縁者の娘をかき集めて、お妙が月経で家治の相手ができない事をいいことに、家治の覚えめでたそうな娘を家治に差し出す。
しかし、お妙ほどの覚えはめでたくなく、寝所を共にしても、お妙の時のように朝まで解放しないようなことはなく、下手をしたら、指一本触れようとしない事態だった。
「お菊…必死になって来ておる…後は…お妙が孕めば…権勢は私の物…」
お菊のなりふり構わぬ策に、瑤子は、お妙の懐妊を待てば、この大奥での権勢は自分の傾くとほくそ笑む。
「御台様…お妙に代わる者も用意しておいた方が…」
「そうね…このまま…お妙が孕まなかった時の保険を掛けておいた方がいいわね…」
このまま、お妙が懐妊しなかった時の事も考えておかなければという声に、瑤子は、このままお妙が懐妊せず、家治から遠ざけられた時の保険を掛けておかなければいけないわねと笑う。
お妙は、確かに器量もいい、だが、この大奥で生き抜くには純粋すぎるのだ。
どんなに家治の寵愛を受けていても、世継ぎが産めなければ、この大奥では力がないのと同じなのだ。
「お菊をギャフンと言わせられる女子を探してこなければ…お妙には悪いけれど…上さんの覚えめでたくて…早々に世継ぎを孕めるような女子を探してこなければ…」
瑤子は、自分のお付きの女たちに、親類縁者で若くて家治の覚えがよさそうな女子を連れてくるように命ずる。
かつてのお妙のように、家治の歓心を得るような女子を用意しておかなければ、いつこの流れがお菊に傾くかわからない。
大奥の権勢を手に入れるのは自分なのだと、瑤子は、お妙を切り捨ててでも、自分の野望へと突き進むのであった。
お妙の純粋さが家治の心を捉えていると気付かないまま、瑤子とお菊の方の大奥での権勢争いは熾烈を極めていった。