「できるなら…そなたが心をくれるまで…そなたを抱いて抱き尽くしたい…だが…そうしたら…そなたの心は離れていく…」
自分の呟きを静かに聞くお妙に、家治は、できるなら、お妙が心をくれると言うまで抱いて抱き尽くしたいけれど、そうしたらお妙の心は離れていくばかりじゃないかと呟く。
「上様…」
お妙は、家治の狂おしいまでの激情に、どう応えていいかわからなくなっていた。
家治に自分の心はもう家治のものだといえば済む話なのだが、それを言えない自分がいる事に、お妙は戸惑い続ける。
「お妙が欲しい…この身体だけでなく…その心も…」
自分の狂おしいまでの激情に戸惑うお妙を押し倒した家治は、お妙の身体だけでなく、心も欲しいと呟くと、お妙に狂おしいまでの激情をぶつけるように、お妙を抱き続ける。
それこそ、お妙が壊れてしまう程に、お妙を抱いて抱き尽くす。
その狂おしいまでの激情を受け止めたお妙は、自分の中にある蔵之介の幻影を振り払うように、家治の腕の中で甘い吐息を漏らし、甘い嬌声を上げ続ける。
自分はもう完全に家治のものなってしまったのだと感じながら…
「お妙…わしの…愛しき奴…」
自分の腕の中で以前よりも艶を増し、甘く息を吐き続けるお妙に、家治は満足しながらも、お妙の心の中にいる蔵之介の幻影と闘い続ける。
お妙はもう誰にも渡さない…例え…お妙の心が一生手に入らなくても…お妙を自分のそばに留め置き続けると、家治は決意する。
心も家治に奪われたと感じているお妙の心とお妙の心が手に入らない事を覚悟した家治の心は、行きつく先は同じであるはずなのに、どこかすれ違い始めていた。
すれ違いながらも、愛おしさゆえにお妙を手放せない家治と家治に心まで奪われた事を実感するお妙の心は、互いに愛し合いながら、僅かな心の行き違いで狂おしいまでの激情と欲情を呼び起こし続ける。