大奥恋絵巻ー26

「私は…あの夜から…上様のお心が見えなくて…不安でした…」


 家治の問いに、お妙は、自分の心が欲しいと言いながら、自分を狂おしいまでに求める家治の心が見えなくて不安だったと答える。


「上様…なぜそこまで…私の心が欲しいのですか…?」


 お妙は、自分の返答を静かに聞く家治に、なぜそこまで自分の心というものを欲するのかと問いかける。


「嫉妬だ…身体は我が物にしても…心はあの者にあるという嫉妬だ…そしてあの者の心も…そなたにある…」


 お妙の問いに、家治は、お妙の身体は我が物にしているとわかっていても、心が蔵之介のあるという嫉妬に狂っていたのだと答える。


蔵之介の心がいまもお妙にある事も感じているのだと呟く。


「そなたに…どんなに罵られようと…わしは…そなたを…あの者のもとへは行かせられぬ…そなたを手放せないのだ…」


 自分の返答を静かに聞くお妙に、家治は、例えどんなに罵られても、お妙を蔵之介のもとには行かせられないし、お妙をどうしても手放せないのだと呟く。


「上様…私は…上様に惹かれてはいます…ですが…あの方を忘れる事はできないのです…」


家治の呟きに、お妙は、自分は家治に惹かれ始めてはいるが、いまはまだ、蔵之介を忘れ去れないのだと呟く。


「私はもう…上様以外の方と添い遂げる事ができないのはわかっております…ですが…いますぐ心を切り替えろと言われてもできないのです…」


お妙は、家治に、自分だってもう家治以外の男性と添い遂げる事ができないのはわかっているが、いますぐに心を家治へと向ける事ができないのだと呟く。


「わしは…いまでも…そなたの心が欲しい…」


 お妙の言葉に、家治は、できるならいまでもお妙の心が欲しくてたまらないのだと呟く。