そして…出航の日…凛子は、港にアスランの姿を探していた。
「凛子嬢…そろそろ…船に…」
凛子の気持ちを知ってか、弘樹は、凛子にそろそろ船が出るから、船に乗り込もうと声を掛ける。
アスランが奪い来てくれるどころか見送りにも来てくれない事に肩を落とした凛子は、弘樹に促されるまま船に乗り込む。
「リンコ」
凛子が甲板に立って先程までいた桟橋を見た瞬間、桟橋に立つアスランの姿に、凛子は、全身の血潮が沸き立つ思いに駆られる。
その時、出航を告げる汽笛が鳴る。
「待って…私…降ります…」
「アスラン様」
「リンコ」
「本当にいいのか…?私のもとで暮らすという事は…二度と故郷に帰れないという事だぞ…?」
凛子を抱き締めながら、アスランは、凛子に、自分を選ぶという事は、二度と故郷に帰れないという事になるのだから、それでもいいのかと問いかける。
その問いかけに、凛子は、アスランの唇に自分の唇を重ねるという形で答えた。