「ハレムで暮らしているという事の意味が…そなたたちにはわかっているのか…?」
家臣の漏らした一言に、アスランは軽く舌打ちした後、弘樹と伊集院伯爵に、凛子が王宮のハレムで暮らしている意味がわかるのかと問いかける。
察したが、ここまで来ておめおめと引き下がるわけにはいかなかった。
「そなたたちも…国の威信があろう…だから…リンコに決めてもらおう…」
わざわざこの国を訪ねた事に意味があるのだろうから、どうするのかは凛子に決めてもらおうと、アスランは、弘樹と伊集院伯爵に提案する。
「リンコを…ここに呼べ…」
アスランは、控えていた宦官に、ハレムから凛子をここに呼ぶように告げる。
「アスラン様…」
「この者たちが…そなたを引き渡せと言っている…」
凛子の視線に気づいたアスランは、凛子に、弘樹と伊集院伯爵が凛子を自分達に引き渡せと言っている事を告げる。
「そんな…私は…もう…」
「凛子嬢…私たちは…この国であなたに起きた事は忘れる…だから…」
自分はもうアスランに純潔を奪われてしまったのだから、帰れないと言おうとした凛子の言葉を遮るように、弘樹は、この国で凛子に起きた事は忘れるから、自分たちと一緒に来てくれと叫ぶ。
その言葉に、凛子は揺れた…揺れたが、アスランを受け入れてしまった今はもう、弘樹への恋慕が遠い過去のものになってしまっている事を感じていた。