砂漠の薔薇ー45

 時間にすれば短いけれど、濃密で満ち足りた時間に、アスランと凛子は、荒い呼吸もそのままに、互いを抱き締め合い、深く口付け合う。
 
 
「リンコ…よかったか…?」
 
 
「はい…こんなに…満ち足りた気分になれるのは…アスラン様とだけです…」
 
 
 自分の愛し方に満足してもらえたかと問いかけるアスランに、凛子は、心身ともに満ち足りた気分になれるのは、アスランだけだと答える。
 
 
「それでは…あの婚約者にも抱かれたことになるぞ…?」
 
 
「そんな事…してません…私が身も心も捧げたのは…アスラン様です…」
 
 
 その言い方では弘樹にも抱かれた事になると問いかけるアスランに、凛子は、弘樹とはそんな事をしていないと否定すると、自分が身も心も捧げたのはアスランだけだと呟く。
 
 
「リンコ…私の…愛しき人…」
 
 
 身も心も捧げたのはアスランだけだと答えた凛子に、アスランは満足げに笑うと、凛子の額や頬に口付けていく。
 
 
アスラン様…くすぐったいです…」
 
 
「よいではないか…無体を働いているわけではないのだから…」
 
 
 額や頬に口付けられ、くすぐったいと身を捩じらせる凛子に、アスランは、無体を働いているわけではないのだからと笑い、凛子の額や頬に口付け続ける。
 
 
「リンコ…」
 
 
アスラン様…」
 
 
 しばし、じゃれ合い、見つめ合ったアスランと凛子は、どちらからともなく口付け合うと、触れ合い、口付け合い、朝が来るまで愛し合った。
 
 
 それから…数か月後…ハレムに産声が上がる…凛子が男子を無事出産したのだ。
 
 
褐色の肌に黒髪のその男子にアスランと凛子は、ありったけの愛情を注ぎ、その男子はやがて成長し、アスラン亡き後のサルタンとなった。
 
 
 
                            終わり