砂漠の薔薇ー13

 凛子が意識を取り戻したのは、夕方近くの事だった。


意識を取り戻した凛子は、まだ遠くにあるような意識を奮い立たせながら周囲を見渡す。


自分が寝ているのは、閉じ込められた部屋のベッドで、赤黒い手首と身体の芯のだる重さは、昨夜の出来事を物語っていた。


「気がついたみたいだな…」


 意識を取り戻し始めた凛子の耳にアスランの声が届き、アスランの声に、凛子は身体を固くする。


「そんなに怯えるな…身体は大丈夫か…?」


 身を脅かした者への恐怖に震える凛子に、アスランは、そんなに怯えなくてもいいと笑い、身体は大丈夫かと訊ねる。


その問いに、凛子は、首を横に振る。


まだ身体がだる重たかったが、それをアスランに告げる義理はないと凛子は思った。


「そなたは…もう…ここの人間だ…高価な絹も宝石も…そなたが望むままに与えてやろう…」


「そんなもの…いりません…」


 凛子はもうこのハレムの人間だから、高価な絹も宝石も、凛子が望むままに与えてやると告げたアスランに、凛子は、高価な絹も宝石もいらないと答える。


「なに…?いらないと…?何が望みだ…?」


 初めて高価な絹も宝石も拒否された事に驚くアスランは、凛子に何が望みだと問いかける。


「私を…ここから…帰してください…」


 アスランに望みを訊かれた凛子は、自分をこのハレムから自分の家族のもとに帰して欲しいと答える。


昨夜の出来事で故郷には帰れないとわかっていたが、凛子はアスランに屈しなかった。