禁区ー27

「さっきの事って…何ですか…?」


 先程の事をどう思っているかと雪田に訊かれた晴美は、それが雪田が自分の額に口付けたことだとわかっていながらも、わからないような口ぶりで、何の事かと問い返す。

ドキドキしたとか額が妙に熱くなったとか言えない…雪田はあくまで自分の主治医…それ以上の行動に踏み込むようことになるようなことは言ってはいけない…晴美の胸にそんな思いが過る。


「さっきの事って、ほら、あの事だよ」


「あの事って…?」


「僕が君にした事だよ」


 あくまでも気付かない振りをする晴美に、雪田は焦れたように、晴美の額に口付けた事を晴美はどう思っているのかと告げる。

その瞬間、晴美の表情が変わった事にさえ気付かないほどに冷静さを失っていた。二人の間に、今までとは違う感情と空気が漂い始めている事に、雪田と晴美は気付き始めていた。