花灯篭ー5

いいえ…あなたは…僕よりも洗練された目を持っている…」
 買い被らないで欲しいと呟いたかなみに、わたるは謙遜しても洗練された目はすぐにわかると声を掛ける。
「ファッションに詳しいデザイナーさんに褒めてもらえて光栄です…」
「いいえ…和装の事に関しては…僕はまだ…素人です…」
 ファッションに携わる仕事をしているわたるに褒められて光栄だと呟いたかなみに、わたるは、和装に関しては自分はまだ素人でしかないのだから、光栄に思わなくてもいいと呟く。
「いいえ…私の持ち物をただの安物ではないと見抜くあたりは…立派なものです…」
 自分は和装に関してまだ素人だと呟いたわたるに、かなみは、首を横に振ると、自分の持ち物をただの安物ではないと見抜くところは、かなり洗練された目をしていると呟く。
「やはり…そうでしたか…」
西陣織や京友禅加賀友禅ではありませんけど…」
 やはりただの安物の着物や帯や小物ではないと思っていたと呟いたわたるに、かなみは、西陣織や京友禅加賀友禅ではないが、それなりの値段がするものだとはにかんだように笑いかける。
「そうだわ…お茶を出すのを忘れてました…」
「お気遣いなく…押しかけて来たも同然なのですから…」
 お茶も何も出していなことの気付き、お茶を出そうとするかなみに、わたるは、押しかけ同然で訪ねてきたのだから、気遣いはいらないと呟く。
「いいえ…遠慮なさらないで…私の持ち物を褒めてくださったのですから…」
 気遣いはいらないと呟いたわたるに、かなみは、自分の持ち物を褒めてくれたのだからそのおもてなしはさせて欲しいと笑い、立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
 その時、一面に広がる絹の海に足を取られる。
「大丈夫ですか…?」
 一面に広がった絹の海に足を取られて転びそうになったかなみを間一髪で抱き止めたわたるは、かなみに大丈夫かと声を掛ける。
「はい…ありがとうございます…何を慌てているのかしら…?私…」
 絹の海に足を取られ、転びそうになったところをわたるに抱き止められ、かなみは、抱き止めてくれたわたるに礼を述べた後、何を慌てているのかと呟く。
「先に…これ…片付けてしまいますね…?」
 わたるに抱き止められた時に、まじまじとわたるの日本人離れした顔立ちを見てしまい、かつてないほどに胸がときめいてしまったかなみは、わたるから身体を離すと、先にこの着物や帯や小物を片付けると呟き、出していた着物や帯や小物を箱に入れ始める。
 その時、わたるがかなみの背中を包むように抱き締めてきた。わたるもまた、かなみを抱き止めた時に見たかなみの大和撫子を絵に書いたような顔立ちに、胸がときめいていた。