下弦の月ー10

「やめてください…人が見てます…」


「じゃあ…人が見てなければいいのかい…?」


 道の上という不特定多数の人間が行き交う中でキスに及ぼうというひろきを、人が見ているのからと制するれいかに、ひろきは、人が見ていなければいいのかと問いかける。


「嫌がる女性に無理強いする趣味はないので…先を急ぎましょう…」


 路上でのキスは嫌だというれいかに、ひろきは、嫌がる女性に無理強いはしないと答えた後、先を急ごうと声を掛ける。


「どちらへ…?」


「今日のデートはまだ始まったばかりです…」


 いまからどこへ連れて行くつもりなのかと問いかけるれいかに、ひろきは、今日のデートはまだ始まったばかりだと笑いかける。


「映画の他って…」


「食事だけじゃありませんよ…デートは…」


 映画の他といったら食事くらいだろう呟いたれいかに、ひろきは、映画鑑賞や食事だけがデートではないと笑う。


「じゃあ…どこへ…?」


「期待は裏切らせないとだけ言っておきましょう…」


 食事ではないのなら、どこへ行くつもりなのかと問いかけるれいかに、ひろきは、期待を裏切らせる事はないとだけ言っておくと言って歩き出した。


「面白い友人がいるのです…あなたにぜひ会わせたい…」


 どこに連れて行かれるか不安げにするれいかに、ひろきは、れいかにぜひ会わせたい友人がいるのだと声を掛ける。


 その言葉に、れいかは、これから連れて行かれる場所はいままで連れて行かれた場所とは違う事を予感していた。