「だから…受け取れません…」
「サルタンからのご命令です…あなた様が受け取るまで毎日届けろと…」
凛子の拒否の言葉に、宦官は困ったように、これは凛子が受け取るまで毎日届けろというアスランからの命令なのだと答える。
「では、サルタンにお伝えください…私は…あなたからのどんな言葉も物も受け取らないと…」
宦官の立場もわかる凛子は、宦官に、自分はアスランからのどんな言葉も物も一切受け取るつもりはないと伝えてくれと告げる。
今日は受け取らないと見た宦官は、凛子に一礼すると、アスランからの贈り物を持って部屋から下がっていった。
「リンコ…どこまで…私を拒否するのか…」
宦官の報告を再び聞いたアスランは、凛子のどんな言葉も物も受け取らないという言葉に、地団駄を踏みたい衝動に駆られる。
「ジパングの娘が喜びそうな物はないのか…?」
執務の間に控える家臣たちに、アスランは、凛子が喜びそうなものはこの国にはないのかと問いかける。
あれだけの絹や宝石を拒否する娘自体、目にするのは家臣たちも初めてで、それを喜ばせる方法を訊ねられ、返答に困る。
しかし、焦れるアスランをそのままにできず、家臣たちは、あれがいいのではないか、これがいいのではないかと議論を重ねる。
「う~む…どれも決め手に欠けるな…リンコは何が望みなのだ…?」
家臣たちの議論を聞いていたアスランは、どれも決め手に欠けると呟き、凛子の望むものがわからない事に苛立ち始める。