愛の日記ー1

「あっ…んっ…うっ…んっ…」 
 
 
 丑三つ時に聞こえる甘い声。雪菜の声である。朝まで由紀夫と何度も交わった事なんて、一度や二度ではない。しかし、今はちょっと違う。なぜなら、雪菜を愛撫しているのが由紀夫ではないからだ。今、雪菜を愛撫しているのは、雪菜自身。雪菜は自慰行為をしているのだ。由紀夫との交わりに不満を持っているのかといえば、そうではない。むしろ、逆だ。由紀夫との熱い交わりの名残りが躰に残りすぎて、つい、自分で自分を慰めてしまうのだ。由紀夫と逢えない時に、由紀夫の指の動きを真似て覚えた行為。
 
 
『由紀夫さん…ごめんなさい…』
 
 
 隣で眠る由紀夫が起きたらどうしようと思いながらも、手の動きは止められない。由紀夫に愛された名残りが、雪菜の右手を動かし続ける。快感と罪悪感の中で、雪菜は揺れ動いていた。静寂の中、雪菜の甘い吐息だけが漏れ聞こえてくる。
 
 
「あっ…んっ…はっ…あっ…んっ」
 
 
 雪菜の甘い声が大きくなる。声を出したら由紀夫が起きてしまう。そう思いながらも、迫りくる快感を抑えられない。由紀夫がするようにとはいかないけれど、それなりの快感は得られる。躰の熱もそれなりに引く。
 
 
「あっ…んっ…はっ…いっ…あっ…」
 
 
 由紀夫がするように、指を花芯に押し当てて擦ると、甘い快感が全身を走る。小さな絶頂は近い。由紀夫が雪菜に与えてくる絶頂と比べたら、小さすぎるけど、甘い快感が全身を蝕むのがよくわかる。
 
 
「あっ…んっ…はっ…んっ…はっ…あっ…」
 
 
 小さな絶頂が見えてきた。雪菜は由紀夫の指の動きを真似ながら、小さな絶頂へと上り詰めていく。
 
 
『由紀夫さん…許…し…て…』
 
 
 小さな絶頂な絶頂に達しながら、隣で眠る由紀夫に許しを乞う。静かな部屋に、由紀夫の寝息と雪菜の乱れた呼吸が漏れ聞こえる。
 
 
「おはよう」
 
 
 雪菜が目を覚ますと、すでに起きていた由紀夫が、優しく笑いかけながら、雪菜の長くて綺麗な黒髪を撫でてくる。
 
 
「おはよう…ございます…」
 
 
 優しく笑いかけながら、自分の黒髪を撫でる由紀夫に、おはようと返す。ございますまでつけてしまうのは教師の性か。正確には元教師だが。
 
 
「よく眠れたかい…?」
 
 
 雪菜の長くて綺麗な黒髪を撫でながら、由紀夫が雪菜によく眠れたかと問いかける。それに、雪菜がこくりと頷く。雪菜が由紀夫につく小さな嘘。昨日もよく眠れなかった。由紀夫に愛された名残りを自分で慰めていたのだから。由紀夫が知ったら、何て言うだろうか?淫らって言われるのかなと雪菜は考えていた。